Remix Heart


□Remix Heartー第五章ー
14ページ/231ページ

義之「お前、これはちょっと・・・・」

由夢「大丈夫、私保健委員」

 保健室行くのは決定かよ!? 下手すりゃ斎場一直線だよ!!

義之「・・・・・・」

 俺は助けを求めて視線を音姉とさくらさんに向ける、が・・・・・・

音姫「わ、私は先に食べてたから、もうお腹一杯になっちゃった」

さくら「ボクももう限界。 ほら、ボクは身体がちっちゃいからさぁ」

 二人揃って、まるで申し合わせていたかの様に同じ方向に目を逸らす。

 に、逃げやがった――――

 自分の事を棚上げにしている? 命が懸かったこの状況、そんなもの気にしていては生き残れない!

 ていうか、そもそも由夢が・・・・

義之「由夢が余計な事するから、こんな事に・・・・」

由夢「・・・・だって」

 責任を追及しようとしたが、途端に由夢がシュンと俯き言葉が続かなくなる。

義之「だって、何だよ?」

由夢「な、何でもないです! 別に兄さんに食べてもらいたい訳じゃないから。 いいです、自分で食べます!」

 由夢は拗ねた様に唇を尖らせた。

義之「・・・・・・」

 薄っすらと、その目が潤んでいるのは気のせいではないだろう。

 別に由夢も悪気があった訳じゃない。 そんな事は分かってる。 ただ、少しだけ不器用なだけだという事は、10年も一緒に暮らしていれば充分に理解出来る。

 あ〜・・・・これじゃ、俺が悪人みたいじゃないか。

義之「鶏肉と白滝、あとは野菜を適当に。 あまり時間残ってないんだから、早くしろよ」

由夢「う、うん」

 半ば投げやりに言ったのだが、それでも由夢は顔を綻ばせると、いそいそと取り皿によそい始めた。 そんな様子を、音姉とさくらさんは微笑みながら見ている。

 わざわざ過酷な道を選んでしまう自分が恨めしい。

由夢「はい。 別に無理に食べなくてもいいからね」

 差し出された皿にはドロドロの黒い粘液。 その中には、重油塗れになった鳥や魚の様な具材達。

 やたら酸っぱい臭いが、何かの毒ガスの様に吐き気を催した。

義之「・・・・・・」

 チラリと由夢を見ると、不安と期待が混じった視線を向けている。

 音姉とさくらさんは、母親の様に笑顔で見守っていた。 その笑顔が、菩薩の笑みに見えてシャレになってない。

 だが、事ここに至っては引くに引けない。 覚悟を決め、物体Xを流し込んだ俺は――――



 お人好しも程々にしなければ命が幾つあっても足りない、と身命を以って思い知る事になった。

――――
――
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ