Remix Heart
□Remix Heartー第五章ー
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そして夏休みが終わって直ぐ・・・・これは人伝に聞いた話だが・・・・・・
遠山先輩が、「朝霧君とフィーナさんが、校門前でイチャついてた」と、楽しげに、それも大声で教室で言ったらしい。
達哉『ぶっ!? なっ、ちょっと待て、遠山!!』
翠『もう、朝霧君ったら! 校門の前で月の王女様とイチャイチャするなんて大胆なんだから♪』
達哉さんが“チャクラを練りこんだ”息を噴出した為に、前にいた会長はそれを喰らって“伸びた”らしい。 遠山先輩はそれを見てケラケラ笑いながら・・・・
翠『ねえねえ、フィーナさんとどこまで進んだの?』
達哉『ばっ!? 言える訳ないだろっ!!』
かなで『へぇ〜? 言えない様な事までしちゃったんだ?』
達哉『ちっがーーーーうっ!!!!』
いやらしく笑いながら聞いてきた遠山先輩に、達哉さんは真っ赤になって怒鳴ったが・・・・それを見ていたかなでさんが追い討ちをかけて自爆したそうな。
音姫『達哉君』
達哉『うぐっ!?』
全く気配も感じさせず背後に立った音姉は、その事に驚いて息を詰まらせ真っ青になった達哉さんを連れて行き、2時間程説教をしたらしい。
分かっていながら、「授業サボって不倫デートか?」などと聞いた会長は、音姉と達哉さんにコテンパンに伸されたのは言うまでもない。 わざわざ“風遁”で黙らせておいたのに、それが無駄に終わってこれじゃ報われまい。
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・・・・
更に極めつけが・・・・・・
ほんの二週間程前だったが、音姉と商店街に買い物に行った時だ。
長い長いウインドウショッピングが終わり、これでようやく家路に着けると思っていたら、よく知る二人を偶然見かけた。
義之『お? 雄真と神坂』
音姫『あ、ホントだ。 デートかな?』
ちょこんと、可愛らしく首を傾げた音姉の視線の先には、仲良く手を繋いで楽しげに話しながら歩く雄真と神坂。 流石、学院一、二位を争うバカップルなだけはある。 陽炎が出来るほど熱々だ。
義之『まあ、誘拐や売春の現場には見えないな・・・・』
音姫『もう、弟君! そんな事言っちゃダメだよ?』
何となく僻みっぽく呟いた俺に、音姉は眦を上げてお姉さん口調で叱る。 うん、確かに言い過ぎた。
義之『・・・・え゛っ!?』
音姫『ん?』
反省しながら再び雄真達に目をやると、とある店に入っていくのが見えた。 音姉も、俺の反応を不審に思い振り返る。
これは間違いなくヤバイと思った俺は、音姉の注意を引こうとしたが・・・・・・
音姫『・・・・・・・・・・・・』
見られてしまった。 顔は引き攣り、目は獲物を狙う目になっていた。 南無阿弥陀仏。
義之『天に坐(ましま)す我らが神よ、どうか哀れな子羊たちに御慈悲を・・・・・・』
音姫『弟君、別の宗教が混じってるよ? それに、安易に神様に頼ったら、司祭様から天罰をもらっちゃうよ?』
義之『・・・・・・・・』
振り返りながら、にこっと可憐な笑みを零す音姉。 惚れ惚れするよ・・・・その裏に、地獄の業火を背負った閻魔様がいなければ。 つか、心読まないで・・・・
「ちょっと待っててね」と言い残した音姉は、雄真達がいる店に入っていく。 ・・・・・・ランジェリーショップへと。
音姫『小日向君、神坂さん!! そこに正座なさい!!』
雄真『げっ!? 朝倉先輩!?』
春姫『え? ええっ!!?』
恐る恐る、不審者の様に店の中を窺うと、雄真と神坂は正座をさせられていた。 めっちゃ恥ずかしい、可哀相に・・・・・・
店員さんは、音姉の剣幕に呑まれ、顔を引き攣らせたまま様子を見ている。 他の客は、「何あれ、修羅場〜?」「ちょ〜うけるんですけどぉ」などとほざいていた。 空気嫁。
ランジェリーショップなんぞに付き合わされた挙句、突然音姉に正座させられて説教まで受けるなんて、死んでも死に切れない屈辱だろう。 お前の心の汗、俺は忘れない。
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