Remix Heart


□Remix Heartー第五章ー
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義之「あぁ、人形劇だってさ」

音姫「へぇ、創作系の出し物やるんだ? てっきり露店とかなのかと思ったよ」

由夢「そうだね。 どっちかっていうと、兄さんはメイド喫茶とか言い出しそうだし。 あと、バニーちゃんとかチャイナとか」

義之「・・・・・・・・」

 音姉の言葉に、由夢はジト目でこちらを見ながらうんうんと頷いた。

 なんちゅー失敬な奴だ。 一番腹が立ったのは、兄の嗜好を的確に把握しているところだ。

義之「杏と茜がやりたいって言い出したんだよ。 まあ、俺もちょっと面白そうだと思ったし」

音姫「ふ〜ん・・・・でも本番まであまり時間ないけど、お稽古とかちゃんと出来てる?」

 音姉がそう言いながら取り皿を渡してくれた。 俺はもうもうと湯気を上げるそれに、ポン酢をかけながら答える。

義之「まあ・・・・俺の台詞は少ないって話しだし」

音姫「えっ!? 弟君、台詞あるの!?」

 熱々の白菜と鶏肉を、ほふほふと口の中で転がしていると、音姉が両手をダンッとコタツについて、身を乗り出しながら興奮気味に聞いてきた。

音姫「ねえ、どんなお話? 弟君はどんな役なの!?」

義之「うぐっ!? ゲホッ、ゲホッ!! ・・・・しゅ、主役・・・・なのかな、一応?」

 突然間近に迫り捲くし立てる音姉に、俺は喉を火傷して咽返りながら答える。

 まだ台本をもらったばかりで、はっきりどんな役なのか把握していなかったが、台本を書いている杏の話によるとロマンチックな恋愛物語になるらしい。

由夢「相手はどなたです?」

 掻い摘んで説明すると、今度は由夢が質問してきた。 こいつも興味津々みたいだな・・・・

義之「・・・・・・えっと、小恋」

由夢「ふ〜ん、小恋先輩と兄さんのラブロマンスかぁ」

音姫「え、えっちなのはダメだからね!?」

 何やら複雑な表情で呟いた由夢に対し、音姉は眉を吊り上げながら言った。

義之「学院のイベントでエッチも何もないでしょうが・・・・」

音姫「だって、弟君だもん!」

 んな、見も蓋もない理由で断言されては、逆に何も言えなくなる。 時々酷いよな、音姉・・・・・・

 ていうか、春からこの手の話しに過敏になってる気がする。 思い当たる理由といえば・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・

瑛里華『孝平。 どう、似合う? 新作だって聞いたから、思い切って買ってみたんだけど』

 夏休みに入る少し前、司の部屋に遊びに行く途中、孝平と千堂をたまたま見かけた。

 他にも生徒が通る寮の廊下で、生徒会役員様は堂々とイチャついていた。 暑苦しいったらありゃしない。

孝平『ああ、凄く似合っているよ。 でも、他の奴に見せるのは勿体無いな・・・・』

瑛里華『もう・・・・孝平ったら!』

 素敵な笑顔を見せながら、聞いてる方が恥ずかしくなる様な台詞を堂々と言う。 それを聞いた千堂は、真っ赤になりながら両手を頬に添え、キャーキャー言いながら悶えていた。

義之『お二人さん、仲がいいのは結構ですが・・・・・・ここ、寮の、廊下ネ。 見てる方が恥ずかしいんですけど・・・・・・』

孝平『うおわっ!?』

瑛里華『きゃぁっ!? ・・・・って、桜内君?』

 二人の世界を壊すのは憚られたが、ここを通らなければ司の部屋には辿り着けない。 心を鬼にして声をかけた俺に、二人はズザザザっと5m程一瞬で後ずさり仰け反った。 大げさだなぁ・・・・う〜ん、アメリカン。

 その夜の夕食後、何気ない会話の中でぽろっとその事を喋ったら、音姉は「そう・・・・」と笑顔で言った。

 次の日、生徒会室で孝平と千堂は小一時間説教されたらしい。 一晩寝てそんな事などすっかり忘れていた俺は、恨みがましい視線を向けてくる二人にただひたすら謝って許しを乞うた。

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