●soup●

□●soup●     〜1杯目〜
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●Suop● 〜1杯目〜
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>私は目が見えない
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>世界は真っ暗で、何もなくて・・・・
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>昔は見えてたような気がする。
>でも、気づいたら見えなくなってた
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>気づいたときにはジンが居て私はジンと暮らしてる
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>「行って来まーす」
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>元気よくそういったら、ジンの声が返ってくる
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>「いってらっしゃい」
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>私は犬のチャッピーといつもの散歩道を歩く。
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>私は何も考えない、チャッピーの行く方に着いて行けばそれでいい
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>リードを引いて、ただ導かれるままに歩みを続ける
>ワンピースの裾がゆらゆら揺れて足にかかる、暖かい風が頬をなでる
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>普通に歩いて2365歩、大体20分
>緩い下りと登りの続くなだらかな散歩道
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>出発して約6分、712歩目いつもなだらかな下りに入るはずが靴の裏に今まで踏んだことのない砂利を踏む。
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>「チャッピー?」
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>いつもと違う道
>上り坂
>砂利の道
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>713歩目も714歩目も砂利が続く
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>かまわずチャッピーは砂利の上り坂を勢いよく駆け上がる
>つられて私も駆け足になる
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>いままでこんなことなかった
>チャッピーが散歩の途中で道をそれることも
>突然走り出すことも
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>715、716・・・・720・・・7??
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>リズムが崩れる、今が何歩目なのかわからない
>走ることなんてずっとしていなかった。
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>砂利の道はごつごつしてて痛かった
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>何歩目かわからくなってからちょうど100歩目
>砂利が足の裏から消えて、ふわふわの草地を踏んだ。
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>少し強い風が吹いて、たくさんの薄くて小さくてヒラヒラしたものが顔や腕や髪にぶつかる
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>チャッピーがほえてる・・・・
>カラカラドアのベルが鳴る音がする
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>チャッピーのほえてる方向、ベルの鳴った方向、わたしが背を向けてる方向
>そこに誰かいるみたい・・・
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>「いらっしゃいませ」
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>あ、男の人だ。
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>いらっしゃいませ?何かのお店?・・・・
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>「あの・・・」
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>「いらっしゃいませ、お客様。お客様は当店初めてのお客様でございます。」
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>「あの・・・、何のお店ですか??ごめんなさい、あたしお金持ってなくて」
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>「失礼いたしました。」
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>男はコホンと軽く咳をしてまた話し出す。
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