キツネの恩返し
□恩返し契約
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4限目終了のチャイムが鳴ると、すぐに校内放送が流れた。
みこは生徒指導室まで呼び出しを食らった。
今日の遅刻の件だろう。
遅刻と同様に呼び出しを食らうのもしょっちゅうのため
クラスメイトも特に無反応だ。
ただ、吉良だけがこちらを向いてニヤニヤしていた。
みこの通う高校は県内でも有数のマンモス校で、とにかく生徒数は多い。お昼時間は購買に足を運ぶ学生で廊下が渋滞する。今日のお昼のメニューについての会話が飛び交う中、生徒指導室に足を運んだ。
生徒指導室は生徒会室や理科教室の特別教室がある一角にある。
授業中や放課後にしか用がないその一帯はお昼時間帯ためやけに人気がない。
見慣れた扉の前に立つと少し憂鬱な気分になった。
せめて、お昼を食べるくらいの時間は欲しい。先生の説教がはやく終わること願いながら
何回ノックしたかわからない生徒指導室の扉を今日もノックする。
「どうぞ」
ノックをすると、中にいる人物から返事が返ってきた。
「失礼します。」
戸を開けるとそこに居るのは、いつもの生徒指導の先生ではなく。生徒だった。
少し色素の薄い髪と藁色の瞳、目鼻立ちがしっかりしていてその顔は整っている。
身長も高くスタイルもいい「品のよい美青年」といった風貌だ。
毎日無気力に学校生活を送っているみこだが、この人物は知っていた。
2年で生徒会長の塚本とかいう先輩だ。
しかし生徒会長が自分に何の用があるのか、放送ミスか何かの手違いかと考えていると
声をかけられる。
「真柴みこさんですね。」
「はい」
「まぁ、かけて」
椅子を勧められ会長の向かいの席に腰掛けた。
会長に呼ばれたのは間違いではないらしい。
会長は組んだ手にあごをのせ、にこやかな表情だ。
「真柴さん。今日はどうして呼び出されたかわかる?」
生徒会長に呼び出される理由なんてこっちが聞きたい。
「わかりません。てっきり遅刻の件で呼び出されたと思ったんですけど。」
「はは、キミは遅刻常習犯だもんねぇ。まぁ表向きは遅刻指導ってことでこの教室借りたんだけどさ」
「はぁ・・・・」
なんとなくあいづちを打つ。
生徒会長にはお堅いイメージがあったが、言葉も雰囲気もやわらかでわりと親しみやすい。
「でもキミ、今日は本当だったら遅刻じゃないからね。早朝6時から登校してるんだから。
あんな早い時間に登校してくる人がいたのも驚きだけどさ、それがいつも遅刻してくる居眠り姫ってのが意外だったよ。」
「え????」
どうして会長は私が早朝に登校していたのを知っている?屋上で寝ていたところを発見でもしたのか?それに結局私が呼び出された理由は?てか、居眠り姫ってなんだ。
みこの頭にたくさんの疑問符浮かぶが、かまわず会長は喋り続ける。
「その、今朝は本当にすまなかった。気分は悪くない?肩は大丈夫?」
心配そうな表情で、会長はみこの肩に触れようと手を伸ばす。