キツネの恩返し

□朝の災難
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一週間の秋休みが終わった月曜日

早朝5時に親にたたき起こされたみこは、授業開始の2時間前には学校に着いていた。

こんな早朝から学校に来ているのは別に用事があるからでも、「学校大好き!!」とかそんな理由ではない。

一学期に遅刻しすぎたみこは、秋休みに入る前に厳重注意を受けていたからだ。
指導はしょっちゅうだが、今回は親にまで連絡が行ったらしい。

自分でいうのは何だが、私はこの学校では遅刻魔として結構有名人らしい。
そして、自他ともに認めるめんどう臭がりだ。

まったく面倒なことになったと思いながら、憂鬱な足取りで自分の教室へ向かう。
校舎の中はまだ電気をつけないと真夜中のように暗く、不気味だった。
今日一日机の上で気の済むまで思う存分寝てやろうと心に硬く誓い、教室のある3階までやっとのことで階段を登りきった。

が・・・みこの硬い誓いは一枚のシャッターの前に脆くも崩れ去った。
教室のある一角に繋がる廊下はセキュリティーの関係か何かなのかシャッターが下りていて教室に行くことは叶わなかった。早朝のため先生や事務員の人もまだ出勤していないのだろう。

願望を打ち砕かれた、みこはさらに憂鬱な足取りで4階へ上がる階段を踏んだ。
階段を上り進めると銀色をした頑丈そうな扉。

鍵のかかった扉を開けると、秋の初めの少し冷たい空気がみこの長い黒髪を揺らす。
早朝の空気はひんやりとしているが、今日はじめて袖を通す冬服の制服は案外暖かかった。

お昼時間や放課後の大人気スポットである屋上だか、みこは今日来るのがはじめてだった。
教室のベランダにあるような柵しか設置されていない屋上からは遠くの風景まで十分に見渡せる。
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