短いの

□ふたまわり
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「うーん」
「どぎゃんしたと?」
「ちー君」
「うん?」
「ちー君はさ、宇宙に手は届くと思う?」





わたしがまた突拍子もない事を聞いたから、ちー君は目をぱちくりしていた。しばらく難しそうな顔をして考え込んでいたけれど、やがて1つの結論に辿り着いたらしい。顔をぱっと笑顔にしてこう言った。

「難しかねー。ばってん、ずっとずーっと背伸びしとったら、届くかもしれんばい」

「わたし思うんやけどね」
「うん」

一呼吸置いて、わたしは星空に視線を投げやった。やっぱり群青色にキラキラとしたビーズが転がっている姿にしか見えない。でもこんなにも魅せられるのは、ちー君が隣に居るからなのかもしれないなあ、とふと考える。

「空を仰ぎながらしゃがむと、遠くなるやんなあ。そこからぐーっと背伸びすると、近なったなあって嬉しくなるんよ」

またちー君は目をぱちぱちさせた。今度は難しい顔じゃなくって、くすくすと小さく笑い始めただけマシだ。

「わたしって人より小さいやん?」
「こまか方が良か」
「…そうやなくて。…だから、うーんと」

わたしは小さく唸った。ピッタリとはまる言葉が見つからなくて、試行錯誤してみる。頭の中のタンスを開いても、中には虚空しか残っていなくって益々焦る。ちー君は相変わらずわたしを不思議そうに見つめてるし、どんどん棚を開けるペースが早まって行く。



「 ちー君が、羨ましいねん 」
「……うん?」


ちー君が目をぱちぱちするのは3回目だからもう慣れました。ふわふわと夜風にそよぐ、彼の触り心地よさそうな髪の毛をふと見つめてみた。群青色の空にぐん、と吸い込まれて、ちー君の向こう側、つまり地平線近くの星が彼をクリスマスツリーみたいに飾っているように見えた。ちかちか、彼が動く度瞬く、消える。

「あ」
「あ?」
「流れ星だ」
「ほんまや」
「…願い事した?」
「…忘れてもうた…」
「次んあるばい」
「せやね」


わたしはちー君が羨ましい。何でって、その高くてスラリとした背格好が大好きだから。大きな手や優しそうな目、ふわふわした髪や地を蹴る足も勿論大好き。けれど、私は彼の大きな背が一番だと思っている。だって、


「いつかちー君、宇宙にお手て届きそうやもん」
「ん?なーん言うた?」
「なーんにも」



いつかわたしの為に、儚いけれどとっても綺麗で、心地のよいあの星を取ってくださいね。それまでしばらく、ちー君のちっちゃな宇宙で我慢させていただきたく思います。

「ちー君、だーいすき」
「俺もばい」



―――――――――――――
ふと空を見ながらしゃがんでみたら、
こんなお話が思いつきました。
一回皆さんもやってみてください^^*
一気に大きくなったような気がしますよ!


090510 高木めこ

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