燃え残ったページ

赤い靴
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誰か私を買って頂戴?



―私の魔法は12時を過ぎれば解けてしまう。それだけは忘れないでおくれ―



とっても値が張るのはご愛敬。その代わりにほら、こんなにも素敵で真っ赤な私。他には無いわよ?だって世界でたった一つしか無いんだもの。



―この靴にぴったりとはまる足の女性を見つけ出せ!私はその方を妃として迎える!―



大きなリボンに高めのヒール。私を履けば、誰でも必ずアナタを振り返る。男達は皆くぎ付け。



―嘘でしょう!?シンデレラが王子様の妃になるだなんて!―



さぁさぁ早く。私をここから連れ出して頂戴。私は只の飾り物じゃないの。冷たいガラスの中はとっても窮屈で退屈なのよ。



―ああ、貴女はまさしくあの時の…どうか私と結婚して下さい―



泥を被った王女でも構わない。飢えた狼だって構わないわ。ここから出してくれるなら、私は誰の手でも受け入れる。



―王子様、私とても幸せです―



さぁさぁ早く。誰か私を買って頂戴!








―いやぁあああっ!!―

―本当になんて美しい『足』なのだろう!私はこんな『足』と結婚出来て幸せだ!―

―ああっ、足…!私の足がぁ…っ!!―

―王子、足首から上はどういたしましょう?―

―そのような醜い者、私はいらん。お前達の好きなようにしろ―

―はっ―

―いや!助けて!お父様、お義母様、お義姉様ぁあっ!―









『カーレン、いつまで靴なんか見てるの!早く教会に行くわよ!』

『今行くわ!……私が戻るまで、誰にも買われていませんように』



…ええ、いいわ。私、貴女を待っててあげる。貴女が再び現れるまで、このショーケースの中でじっとしてるわ。

だからね?カーレン。貴女に買われて、箱から取り出される時が来たら、その時は一緒に舞踏会に行きましょう?ダンスを知らなくても大丈夫。私と貴女の相手の殿方が優しくリードしてあげるから。

だけど一度履いたらもう逃がさない。王子の股間を蹴飛ばして、貴女は死ぬまで踊り続けるの。楽しいステップを踏みながら、そこのマダムの葬儀を華やかに彩るのも悪くないわね。


さぁカーレン。早く助けて頂戴な。私と踊って頂戴な。

そしたら御礼に魔法をかけて、貴女をシンデレラにしてあげる。


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