捧げ物

□11400hitキリ番
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一呼吸置いて意を決し、九十九さんが四朗さんの肩に乗る。更にその体重が僕の背中へ。片方は軽い子供の重さといえ、二人も乗せるのは流石にきつい。


「ぐ、ぅえっ…」

「お文、ちと押さえておれ」

「は、はい!」


僕達が迫る中、シラタキはそこから動く事なく大人しくしていた。伸ばした九十九さんの手にシラタキの真っ白な毛が触れる。あと少し、もう少しだ。


「おや、何をされているのです?」

「――げっ!奏吾!?」

「……!」


手を引っ込めた反動で均衡が崩れ、四朗さんが僕の背中から足を踏み外してしまった。九十九さんの重さで大きく揺らぎ、あわや二人は地面に転落しそうになる。しかしそこはお文ちゃんのお陰で何とか体勢を持ち直す事が出来、大事には至らなかった。


「なああああ!」

「ふがっ!」


飼い主の姿を見たからなのか、それまで全く動く気配を見せなかったデブ猫が九十九さんを踏み台に下へと飛び降りる。軽く足を痛めたのか、後ろ足をひょこひょこさせながらも走り寄って来た愛猫を抱き上げた奏吾さんの目が変わった。


「…九十九様?」

「いや、わしのせいではないぞ!?元凶はこやつらだ!」

「なっ、僕は違いますよぉ!」

「私…も…?」

「そもそもは四朗さんが張り切るからですよ!」

「…!?」

「わしに振るな!」

「四朗様は八重助君の為に強く当たっただけで…!」

「はぁ……」


いつまでも責任を押し付けあってる僕らに対し、奏吾さんの踏み入れる足音が異様に響いた。狐のような糸目が僕らを射抜く。何だかこんな光景が前にもあったような。しかし今回は前と違い、誰も逃げられそうにない。


「誰が悪いかと言うのは詳しい話を聞いてからにしましょうか。取り合えず皆さん、全員そこに直って下さい」


奏吾さんに優しく微笑まれ、全員大人しく膝を折った。聞くと言っておきながらも、この雰囲気ではまともに話を聞いてくれるとは思えない。恐らくは全員に罰が与えられるんだろうなーとか他人事のように考えながら、腕の中で欠伸するシラタキを恨めしく思った。









・あとがき

リクエストのことのせ小話、遅くなりまして申し訳ありません;

本当に短い話と言いますか、これでは寧ろただのネタですね。Azzurro様が好きだと言って下さった七重も書きたかったのですが、どういう過程か結果がこのような大捕物になってしまいました…。

押し付ける形になってしまいますが、これをキリ番小説として贈らせて頂きます。リクエストして下さりありがとうございました!
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