雛鼠作

□クリスマス準備編
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「もう一ヶ月は経つ?」

サクラに聞かれて、ナルトは手帳を取り出す。
その様子を見たサクラは、かつてのナルトからしてみたららしくないそのしぐさに思わず口元が緩んでしまう。
手帳をめくる音に、サクラの記憶のページもめくられる。
近辺の不良と喧嘩をしていて、明るくて、騒々しくて、鬱陶しいと思っていた高校時代。
あの頃に比べたら、ナルトは別人のように大人っぽくなってしまった。
高校の時は時間割でさえ管理できていなかったのに、今手にしている手帳には予定が細かく書かれている上に、どうも軽い日記までつけているようだ。

「うん、帰国予定日から約一ヶ月。出国した日から数えれば約三ヶ月だってばよ。・・・サクラちゃん?」

歳をとったなあ、と十年近く前の自分達を思い出していたところに、古い仲間の前では変わらない口癖に今度は堪えきれずにふきだしてしまう。

「ごめんね、なんか昔を思い出してナルトも私もずいぶん変わったなあと思っていたのに、その口調で話しかけられたから・・・」
「いいけどさあ、で?何の話だってばよ?」

三ヶ月前から暇が増えたナルトにたびたび声をかけてくれていたサクラが、いつもの居酒屋ではなく個室のちょっと高級そうな飲み屋に連れて来てくれた事に何か話があるのだろうと考えていた。

「サスケ君がいなくて寂しい?」

行きつけじゃあできない話をとことんしゃべってもらうわよ。
とすごんでくるサクラに、今日の誘いは断るべきだったかとナルトは後悔し始める。

「まずは、飲み物頼んでからにしようってばよ」
「私は生中、あんたはグレープフルーツハイでしょ?先に来て頼んでおいたからそろそろ来るはずよ。逃げないでちゃんと答えなさい」

ちょうどそこへ店員が食べ物と飲み物を運んでくる。
とりあえず乾杯をすると、ナルトはマドラーで氷をかき混ぜるだけで口をつけようとしない。
反対に、サクラはそんなナルトにお構い無しにビールを煽る。

「寂しく無いって言ったら嘘になるとは思うけど・・・。最近はもともとあんまり会ってなかったし、会っても食事だけで2時間くらい一緒だったらいいほうで・・・。むしろ、今のほうがしょっちゅうメールをしてるくらいでさ。会えないし、時差でなかなか電話できないから声も聞けないけど。あいつ、普段より写真を大量に送ってくるし。平気だってばよ」

はあ・・・・。

質問には答えたぞと、勢い良くサワーを飲むナルトにサクラはこれ見よがしに溜息をつく。

「あんたねえ、サスケ君の愛に甘えてちゃだめよ」
「甘えてるって・・・」
「付き合って何年になるの?もう9年近くになるでしょ?なんでいまだに一緒に暮らしてないのよ?」
「だって・・・・それは・・・」

そういうサクラは同じ頃から付き合い始めたサイと大学進学時に同棲を始め、すでに籍まで入れている。
なので、サクラのその疑問に理解はあるものの、自分達の性別を考えると納得はできない。
この歳にもなって、男二人が同居を始めたら裏を勘ぐられるに決まっている。
そう言った勘ぐりは出世にかかわっ手来る事が多い。
自分の出世に興味は無いが、サスケの出世の妨げにはなりたくない。
そこまで考えてはいるが、口には出せなくて俯いてしまう。
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