雛鼠作

□眠れる子恒、妬ける仲達を走らす
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曹丕が陳情の処理をすると言うので、仕事が終わった三成はそれに付き合おうと曹丕の部屋に大量の本を持ち込んで読んでいた。
三成は床に胡坐をかき寝台に背を預けて、人の部屋にいるとは思えないほどくつろいでいた。
茶を入れ曹丕に声を掛けると、またその体勢に戻った。
曹丕は書簡の片付けに区切りが付くと、仕事机から離れて、三成の前にある机に用意された茶を取りに来る。
そして、茶を飲みながら少々休むと、また仕事に戻る。
それがいつものパターンだった。
しかし、今日は三成が本を読んでいる様子を見ていたかと思うと、三成の元へやって来ておもむろに横になり始めた。

「!? 何だ?!」
「うるさい、そのまま座っていろ」

三成の胡坐を少し崩した所に入り込んで暫く寝心地を求めてごそごそしていたが、落ち着くと太ももを枕に体を丸めて寝てしまう。

「仕事は終わったのか?」
「・・・」

三成の質問には答えないが、きっと終わっていないのだろう。
甘えてきているのか何なのか、見た事の無い曹丕の行動に三成は動揺するが、聞いてもきっと答えはもらえないだろう。
下手に刺激して機嫌を損ねるのも嫌なので、溜息を付きつつ寝台から薄布団を引き摺りおろし、曹丕に掛けてやる。

幾刻ほどか経ち、手の届く範囲の本は全て読み終えてしまった。
曹丕を足に抱えたままでは、動くに動けない。
かと言って眠くも無いのに添い寝をする気にもなれないが、最近遠征が多かった曹丕の疲労を考えると、もう少し寝かせてやりたいとも思う。
暫く悩み、曹丕が起きないほどの声で従者を呼ぼうと口を開く。

「失礼します」

扉を開けた後に声を掛ける、という無礼な態度で入ってきたのは、三成の天敵である司馬懿だった。
自分の主である曹丕と三成の関係を快く思っていない司馬懿は、三成が曹丕の部屋にいる時は先ほどのように突然入ってくる。
様はいかがわしい事をしないように牽制をかけているのだ。

「曹丕様は?」

司馬懿の言葉に、厠とでも言っておくか?と思うが、嘘がばれた時にこいつほど面倒なヤツはいないと思いやめておく。
そして、無言で足にかけていた布団をどかす。
その瞬間、司馬懿は目を見開き絶句した。
そして一瞬の静寂の後、司馬懿の悲鳴と廊下を走る音が屋敷に響き渡った。

後日、三成が目撃者から聞いた話によると、走り去る司馬懿の目からは光る物が流れていたそうな…。



もちろん曹丕さんは起きちゃいました。
ちなみに曹丕さんは、お仕事してない三成さんが羨ましくて少し困らせてやろうとしてマジ寝してしまいました。
これ、木火でもいけると思うんだ。
司馬懿はもちろん水で。
題名はBLACKがつけてくれたんですけど、司馬懿は走りまわされすぎ。

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