雛鼠作

□ゲリラ豪雨編
2ページ/5ページ

いつから降っていたんだろうなと話しながら駅に向かって歩いていると、だんだん騒がしくなってきた。

「なあ、なんか人がすっげー沢山いねえ?」
「嫌な予感がするな」

駅の改札口付近まで辿り着くと、なにやら駅員が言っているのが見える。
しかし声の通りが悪く、客のざわめきで何も聞こえない。
とりあえず人波にまかせていると、駅員がメガホンを持ちながら回ってきた。

「ただ今終点の駅に水が浸水した為、運行を見合わせております。上り方面は後20分ほどで運行を再開する予定です。下り方面の復旧は未定です。バス停より振替運行をしております。下り方面の方はバスをご利用下さい」
「だってさ。どうする?」
「混まねーうちに、さっさとバス停に行くぞ」
「おう」

既に周りの人ごみがバス停、もしくは他線に向けて動き始めているのを見て、サスケがナルトの腕を掴んで駆け足でバス停へ向かう。

「振替はこちらです。行き先によってバス停が違います。係員に従ってください」
「この雨の中バス停に並ぶのか」
「ビニ傘買ってくるか?」

小さい屋根しか無いバス停を見て、バスを待っている間に濡れる事は予想が付く。
だったら、傘を買うしか無いだろうとナルトが提案する。

「お前んちに行くにはどのバスだ?」
「え?えーっと・・・。3番乗り場かな。駅にしかとまんねーみてーだし」
「・・そこまで混んでねーけど、屋根はねーな」
「1本でいいよな。ちょっと行ってくる」

ナルトはすぐそばにある売店へビニール傘と、ペットボトルを2本買う。
何も言っていないのに、パッケージを剥がしてくれたおばさんに礼を言うとサスケの元へ走って戻る。

「行こうぜ。って、重てえ」

ナルトの持つ傘に二人で入り屋根から出ると、あまりの雨量に傘がありえない重さになり、ナルトの傘を持っていた手がぐらっと揺れる。

「大丈夫か?持つぞ」
「いい。それよりあの係員大変だな」

バスの係員が雨合羽を着て乗客の誘導をしている。
しかしこの激しい雨の中、つばが付いていても顔に水が垂れてきていて、まるで滝にうたれているようだ。

「ご利用あ・がとう・ざいます。こちら・バスで・・・あっていますか?」

行き先の書かれたパネルを持って、係員がナルトたちのところまで回って来る。
しかし、顔にかかる雨水と、傘の弾く雨音で大変聞き取り辛い。

「え?あ?」

何を言われたか解らずに戸惑っているナルトをよそに、サスケはパネルに描かれた路線図を確認する。

「はい。あってます」
「定期をお持ちでなければ、降車駅の電車賃と同じ値段になります。支払いは降車時になります。こちらの料金表の値段になりますので、ご準備ください」
「電子マネーで払えますか?」
「ご利用いただけます。また、車内にタオルが用意されております。ぜひご利用ください」
「解りました」

係員がお辞儀をして、次のお客の所へ行く。
サスケがなんとなく目で追うと、いつの間にやら長蛇の列ができている。

「さっさと来て正解だったな」

先ほど、すばやくバス停に来た判断は正しかったと、少し安心する。
今の順位だったら椅子に座れるだろうが、今列に加わっている人たちはまず座れないだろう。
だんだん長くなっていく列を見ながらそんな事を考えていると、ナルトに肩を叩かれる。

「なあなあ、俺ぜんぜん聞こえなかったんだけど何だって?」
「降りる時に料金を払う。電子マネーも使えるらしい」
「解ったってばよ」

今日の夕飯は二人で作ろうと言っていたのだが、まだ献立を決めていなかったのでどこで何を買うかなど話しているうちに、拡声器を持った係員が歩いてくるのが見える。

「後10分ほどでバスがまいります。人数を制限させていただきますので、お乗りの方は席を空けず、詰めてお座りください」
「後10分か。傘買っといてよかったな」
「ああ」

一向に弱まらない雨足に、傘を買っておいたことに安堵しつつ話を再開させる。
10分が経つと、列が動き始める。

「まだバスも見えないのにせっかちだってばよ」

とは言え、列が動いて自分の前にスペースができれば詰めてしまう。
すると、先ほどの拡声器を持った係員がまたやってきた。

「まもなくバスが参ります。車内にありますタオルは、降車時に回収いたします。お降りの際に回収ボックスへお入れください。繰り返しお願い申し上げます。席は詰めて空席が無いようにお願いいたします。今から乗れる方を区切らせていただきます」
「乗車制限か」
「何でだろうな?」
「まあ、長距離・・・とは言わなくても結構長い距離だからな。途中乗車もねーようだし、すし詰め状態を防ぐためじゃないか?」
「ふーん」

二人がどこで区切られるのだろうかと見ていると、以外に後ろのほうで区切られた。

「案外乗れるんだな」
「ああ、結構多い」

この、むあっとした湿気の中、大人数が乗っているバスを想像して、ちょっとテンションが下がる。

「バスが到着しました」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ