雛鼠作

□お正月
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そうして訪れた大晦日、いつもどおりの生活をしているが、家の周りの活気が聞こえてくると正直あまり楽しくない。
転寝したり、テレビを見たりしているとようやく「行く年来る年」の時間になり、もうすぐ年が変わるのを漠然と感じる。

『年明けまでのカウントダウンを始めます!皆さんご一緒にカウントしましょう。では、10から始めますよ』

ザッピングをしていると、テレビの中で慌しくアナウンサーが出演者をまとめ始める。

『10!』
『9!』「9」
『8!』「8」

言う相手もいないのにカウントダウンもおかしいとは思いつつ、乗りにあわせて今年最後のイベントに参加する。

『7!』「7」
ピンポーン

カウントにかぶってチャイムがなる。

「はあ?こんな日のこんな時間に誰だよ?」
『6!』

ピンポーン

『5!』
ピンポーン

「・・・あーもう」
『4!』

『3!』
ピンポーン


「はいはーい」
『2!』

『1!』
ガチャ

「あけましておめでとう」
『あけましておめでとうございます』

ドアを開けるとサスケがいて、テレビとかぶって新年の挨拶をされる。

「え?なんで?サスケが?」
「暇だから来た。それより新年の挨拶も出来ないのか?」
「え?あ・・・・、あけましておめでとうございます」

当たり前のような顔をしてサスケが言うものだから、思わず返してしまう。

「今から暇か?」
「べ、別に暇だけど」
「じゃあ、これから着いて来い」
「え?なんで?」
「暇なんだろ?」

暇な事を確認されて、仕方なく出かける準備を始める。

「しっかり暖かくしろよ」
「わかってるってばよ!」

わけが解らない中、とりあえず準備を済ます。

「いくぞ」

ナルトの準備が出来たのを確認すると、サスケは手をとり歩き始める

「おい、どこに行くんだってばよ?」
「・・・・」
「無視かい!」

言葉を無視してずんずん歩くサスケに、ナルトは諦めて引っ張るに任せる事にした。
そうしているうちに、人が多くなってくる。
賑やかな音も聞こえて来た。

「神社?」
「初詣だ」

そのまま二人で参拝の列に並び、お祈りを済ませる。

「サスケは何を祈ったんだ?」
「健康祈願」
「強くなりたいとかじゃねーの?」
「それは自分で努力する事で、祈る事じゃねえ」
「あー・・・・」
「きゃー!サスケ君じゃなーい」

二人が話していると、そこにけたたましくイノが突っ込んでくる。

「おい、イノ。正月早々めんどくせー事すんなよ」
「あ、そうよね。あけましておめでとうございます」
「ちげーって」

シカマルがイノを諌めるが、聞く耳を持たない。

「ねえねえ、これから二人でどこか行かなーい?あ、初日の出一緒に見に行きましょうよ!」
「今日は朝から3家族お祝いするから、早く帰って来いって父さんたちが言ってたよ」
「じゃ、一緒にお祝いしなーい?」

暴走し続けるイノにチョウジも注意するが、それもイノの耳には聞こえないようだ。

「何?お前らも休みだったのか?」
「いや、ついさっきまで任務だ。帰る前にお参りしてから帰ろうと思ってな」

イノは留められないと引いたシカマルに、ナルトは近づいていく。
シカマルがナルトからサスケに視線を移して固まった。

「おい、ナルト。俺から離れろ。ってゆーか、サスケの所へ戻れ」
「何でだよ?あいつは今オトリコミ中だってばよ」
「そろそろ終わるから、とっとと戻れ。俺は命が惜しい」
「意味わかんねーってばよ」

シカマルは先ほど、イノに抱きつかれながらすごい目でこちらをにらんでいるサスケと目が合ってしまった。
その後、話せば話すほどサスケからさっきが飛んでくる。
しかしいくらナルトを追い払おうとしても、ナルトはなぜか意地を張って離れていかない。

「あーーー。めんどくせー」

一言叫ぶと、サスケに近づいて行ってイノの襟首をつかむとサスケから引き離す。

「何すんのよ!」
「俺らは任務帰りだ。汗臭いぞ」
「え?ほんと?」
「本当だ」

シカマルはそっとイノに囁き、指摘されたイノは、慌ててサスケから離れる。

「きゅ、急に用事思い出しちゃったから帰るわ!」

またね!と挨拶もそこそこにシカマルとチョウジを呼び寄せると帰っていってしまう。

「イノは相変わらず騒がしいってばよ」

サスケは心の中で、お前に言われたらお仕舞だと思いつつも言葉にはせず、代わりにまたナルトの腕をつかむ。

「俺達も帰るぞ」
「・・・おう」

神社に来ただけだったが、一人で寂しい所に来てくれたサスケに、ナルトは内心感謝していた。
まだ帰りたくは無かったが、引き止める言葉も見当たらず、これ以上神社でする事も無いので大人しく返事をする。

だんだん喧騒から離れて行って、分かれ道まで来るとサスケは立ち止まってしまった。

「サスケ?」

しばらく待っていたが、腕を放してくれないのでどうしようもなく、ナルトが声をかけると微かにサスケの手が緊張する。
しばらく待ってもそのまま動かないので、もう一度ナルトが口を開こうとすると、サスケが振り向く。

「俺の家に来て、雑煮と御節食べないか?」
「へ?」

振り向くと、サスケは一息にナルトに問いかける。

「ちょっと、まって・・」

サスケに言われた事をナルトは反芻する。
行く事になんら問題は無い二人の家族構成だし、サスケは仲間だ。
いくらいつも喧嘩しているとは言え、家まで行った事もある。
しかし、今日は元旦だ。
と、ナルトが悩んでいると、ナルトが嫌がってはいないから悩んでいる事に気がついたサスケがもう一つ押しを入れる。

「こたつとみかんもあるぞ」
「行く!」

サスケは以前、任務中にこたつが欲しいと言っていたナルトの言葉を聞き漏らさずにいた事にホッとしつつ、予定通りナルトを誘えた事に安堵する。

「じゃあ、お邪魔するってばよ」
「おう、どんとこい」

まんまとナルトを家に誘い込んだサスケが、食べ物で安心させてそろそろそばに寄っても良いかな?と距離を測っている所にサクラが邪魔をするために来たり、さらにそこに任務を終えたカカシが来てしまったり、さらにさらにイルカまでが差し入れを持って来てしまったり。
と、サスケにとってはせっかくのチャンスが儚く散った元旦だったが、ナルトは大いに喜んだ。


その後
ナルトはサスケの家で楽しかったのが癖になり、また遊びに行って良いのか悪いのか図っているので、サスケにチャンスが来るのも遠くないかもしれない。
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