雛鼠作

□雨降って絆深まる?
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「うっわー、すげー雨」

今日の任務は古くからある旅館の蔵整理だった。
夕方前に整理を終え、外に出ようとした瞬間・・・。

ザーーーーーー

いきなり、バケツをひっくり返したような雨が降ってきた。
終わりしだい里に帰れる任務のはずだった。

(早めに帰れたら、久しぶりに風呂にゆっくりつかろうと思ってたのに・・・。)

この分では里に帰れるかどうかも危ぶまれる。
そう考えると全身から力が抜けてしまう。

「今日中に帰れるかなー?」

思わず声に出してしまったナルトの後ろで、サスケが何かを探し始める。

「何やってんだよ?」

貴重なものと日用品とを分けて、片付けるのが今回の依頼主の要望だった。
とりあえず二人で貴重品と日用品に分けて、貴重品をサスケが。日用品をナルトが片付けた。
その、ナルトが片付けた日用品のところをサスケが漁っているのだ。
気にならないわけがない。

「だからー、何やってんだよ!」

無視されて、カチンと来たナルトが大きな声を出す。

「傘」
「・・・はい?」

背を向けたままのサスケの声は、ナルトには聞こえなかった。
サスケは漁っていた手を止めて、立ち上がる。

「傘だ。」

諦めたのか、蔵の2階に続く階段に座り込む。

「かさあ?傘なんか差したって、里に帰る頃にはびしょびしょになってるってばよ。」
「違う。」

では、何に使うのだろうか?それとも雨用の傘の事ではないのだろうか?
ナルトが首を傾げ始めたのに気が付いたのかサスケはため息をつく。

「蔵で雨宿りするつもりか?」

それでもいいのだが、蔵の扉は閉まると自動で鍵も閉まる構造になっていて、閉まったら外からでしか鍵を開けられない。
と、言うことは扉を開けたままにしなければならないのだが、依頼主の蔵に雨が振り込むままにするわけにはいかない。
さらに、大抵の蔵は涼しくなるほどの通気性はない。
昨日からいい天気で気温が上昇したところに降った雨なので、湿度が高く蒸し蒸しする。
こんな状態で蔵に閉じ込められたら、いかに忍びといえども熱中症になってしまうだろう。
大体、蔵なのでトイレも飲み物もない。

「そんなんいやだーー!」

ナルトが叫ぶが、サスケもそれだけは勘弁してもらいたかった。
仮にこれが涼しい日だったとしても、ナルトと二人きりで閉鎖空間にいて、理性を保つ自信がサスケにはなかった。

「片付ける時に傘はなかったのか?」

答えは解っていたが、片付けた本人であるナルトに聞いてみる。

「えーーーーーーっと?・・・・・なかった。」

予想通りの答えに次の事を考え始める。
そもそも蔵に傘をしまうはずがない。

母屋まではそこそこ離れているので、走ったとしてもずぶぬれになるのは目に見えている。
かといって、これ以上蔵の扉を開けておくのは良くないだろう。

「サクラちゃん大丈夫かなー。」

自分と、もちろんナルトの事も併せてこれからの事を考えているサスケをよそに、ナルトはよりにもよってサクラを心配し始める。

「サクラはカカシと一緒だし、ここよりも母屋に近い。それに、小さい蔵だからとっくに終わってるだろう。」

サクラとカカシは、サスケとナルトに振り分けられた蔵よりも貴重で、高い物がしまってある蔵の整理をしている。
当然あの上司は、ちゃちゃっと終わらせていつもの本をよんでいるだろう。

「走るぞ。」
「えー、この雨の中をか?」

来たときは母屋からこの蔵が見えていたのに、今は雨のせいで母屋は見えない。
その光景を見ながらナルトが肩を落とす。

「これ以上扉を開けておけない。外に雨宿りをする場所もない。だったら、母屋まで走しるしかない。」

もちろん蔵の中に残れないことはナルトもよくわかっている。

「わかったってばよ。」

他に方法がないのを理解し、ナルトは靴をはきなおす。

「いくぞ!」
「おう!!」

サスケの合図で、二人は倉の扉を閉めて雨の中に飛び出す。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あちゃー、見事にずぶぬれだねえ。」

母屋に着くとカカシが浴衣姿で立っていた。

「こんな雨の中、傘も差さずに帰ってきたら当たり前か。」
「そー思うんだったら、迎えに来て欲しいってばよ。」

ナルトは、いつも立っている髪の毛が雨のせいでおりてしまって邪魔なのか、犬のように頭を振って水を飛ばしながら文句を言う。
サスケは舌打ちをするだけにとどめた。

「だって、せっかくお風呂に入ったのにもったいないでしょ。」

すっかりくつろいでる様子にイラつくが、今は自分たちの格好をどうにかしたい。

くしゅん

とうとうナルトがくしゃみをする。

「おいカカシ、タオルを持って来い。そしてナルト、脱げ」
「なーー?!こんのサスケベ!」
「ちがう、風邪ひくだろ!」

サスケはナルトに、とりあえずオレンジのジャケットを脱ぐようにいって、肌にくっついてしまったそれを脱ぐ手伝いをしながらカカシに命令する。

「お前ねー年上相手にはもう少し言葉遣いを改めなさい。だいたいタオルで拭いてどうにかなる濡れかたじゃないでしょ。一泊させてもらえる事になったから、ここで服を脱いじゃって温泉で暖まってきなさい。」

何とかジャケットを脱いだナルトはそのままズボンのファスナーをあけ、シャツも脱ぎ出す。
それをみて、サスケは慌ててナルトのシャツを下に引っ張る。

「素直に脱ぎだすなウスラトンカチ。ここは母屋で客がこないとはいえ、関係者が出入りする玄関だぞ!」
「いちいちうるせーな!」
「はいはい、こんなところで喧嘩しないでねー。」

やれやれといった調子でカカシが二人の間に入りつつ、ナルトの上着を受け取る。

「そのまま上がると依頼主のお宅を汚しちゃうから、また濡れちゃうけど外から回ってね。ここからでて右に行くと庭があるんだけど、そのままぐるっと家を半周すると温泉近くの裏口まで行けるから。そこにタオルも用意しておくから、仲良くお風呂に入りなさいね。」

また外に出ないといけないと思うと気が滅入るが、これ以上濡れても変わらないのだから思いっきり浴びてやる!と、ナルトは外に飛び出した。
両手を広げて空を見上げながら雨に打たれているとサスケに腕をひかれる。

「暗くなる前に、さっさと風呂に入るぞ。」

そう言ったきり黙ったままのサスケに引かれて裏口までいき、服を脱いで置いてあったタオルにくるまって風呂へと向かった。

当然の事ながら裸のナルトにどきどきしたり、背中の流しっこをねだられて、サスケが必死に理性と手のひらに書いて飲み込んだり・・・。というのは、また別の機会に。








おしまい

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