雛鼠作

□後ろ抱きオムニバス「4.慣れ(ナルト)編」
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テストを間近に控えて、ナルトはこのところ学校が終わると家でサスケに勉強を教えてもらっていた。
急な初夏のような陽気が続き急遽夏服での登校が認められた途端、今日は一転して寒い日になった。
ナルトの家の暖房は先日しまったので、出すのは面倒だ。
肌寒いけれど我慢できないほどじゃない。
ナルトの頭の中に冷えると風邪を引くという知識は無い。
だから、暖房を出すか上着を出すかこのままかの選択肢の一番簡単な物を選んで勉強に気持ちを戻す。

「寒いな」

戻した瞬間に、サスケが呟いた。
ナルトは自分の脳内とシンクロした内容に顔を上げるが、すぐに机に戻す。

「暖房も上着出すのもめんどくせえ」
「それもそうだな」

サスケなら場所も解っているが、出しても戻すのも面倒だ。
何か暖かい飲み物でも入れようかと立ち上がる動作を始めたその時、サスケが一瞬早く立ち上がる。
サスケも同じ事を考えたのだろうと、ナルトは目の前の数学の問題に集中させてもらう事にした。

「へ?え?うわっ!」
「あったけえ」
「サスケ?!ふざけんなよ!」

まさかのサスケの行動にナルトは慌てる。
サスケはナルトとベッドの隙間に入り込み、後ろからナルトを抱え込んで座ってしまう。
ナルトが抗議の声を上げても、無視どころか更にくっついて頬擦りまでしてくる。
ナルトは自分の心臓が煩くてクラクラしてくる。
次に、この音をサスケに聞かれてはいけないと引き剥がそうと荒れる。
しかし、暴れれば暴れるほどサスケの拘束は強くなって更に密着する結果になる。

「やめろって」
「だって寒いから」
「だってじゃねえ!邪魔!窮屈!離れろ!」

だってと言う言葉が似合わ無すぎて、ナルトは鳥肌を立てる。
そのおかげで鼓動は少し落ち着いた。
「いいだろ。こっちの方が勉強も見やすいし。ほら、ここ間違ってる」
「え?どこ?」

サスケの腕が伸びてきてノートを指差す。
仕方が無いので最初から解き直し始めて、サスケをどかし損ねた事に気がついた。
恐らく、もう一度冷静にどくように言えばサスケは元のナルトの正面へと戻るだろう。
でも、サスケが後ろからいなくなって、いつの間にか腹の前で組まれている腕も無くなる事を想像するとなんだかもったいなく感じた。
最終的に、暖かいからこのままにする事にした。

「正解。次はこの問題」
「ううー。これ苦手・・・」
「苦手な問題は数をこなすしかない。これと、これとこれ。終われば休憩」
「おっしゃ!」

先日綱手から貰ったせんべいがまだ残っている。
サスケが唯一得意な日本茶を淹れさせて、ゆっくり休憩するためにナルトは頑張って問題を解き始める。
すでに慣れてしまった背中の温もりにとても安心する。

「秋からやっとけば良かったな」

残念ながらサスケの不穏な一言は聞き取れなかった。

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