BLACK作

□桜色の香り。
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サイの住む部屋は里の中心からやや外れた所にあり、行商や商売の声は届かない。
しかしサクラが言いたかったのは、イノやナルトと比べてサイが格段に物静かだという事だった。
サクラにとってイノとナルト、そこにリーも加えて三人が騒がしい分類。
対してヒナタとシカマル、そこにサイを加えて物静かな三人だ。
そこにネジが入らないのは、サクラ曰く“威圧感がウルサイ”のだそうだ。

サイ「本を読むには良い部屋だよ。」

返って来ない返事にベッドを見ると、サクラが寝息を立てていた。
布団を肩まで掛け、愛用のスケッチブックに手を伸ばす。
まずはいつも世話になっている小さな鼠を一匹。

サイ「サクラが何時までに戻れば良いか調べてきて。」

続いて流れる様に筆を滑らせると、サクラの寝顔を書き上げる。

サイ「…可愛くないな。」

その言葉にサクラの眉がピクリと動く。

サイ(そうか、やっぱりこの桜色が無いとサクラらしさが出ないんだ。)

溜め息混じりにスケッチブックを閉じる。

サイ「そうだ、イノ…!」

またサクラの眉がピクリ。

サイ(彼女なら染料にも詳しいかも知れない。)

そんな事を考えながら読みかけの本を手に取る。

サイ(さっきの絵をサクラに見せたら怒るのかな?殴られるのは嫌だけど、ちょっと愉しそうだな。)

手に持ったままの本は開かれないままだ。

サイ(ナルトに見せたらどうだろう?またピーピー喚くのかな?ふふ、それも愉しそうだな。)

しばし物思いに耽っていると、程無くして頼れる鼠が戻ってきた。

サイ「ごくろうさま。」

紙に写されたサクラの予定表を見て、時計とサクラの寝顔を確認した。


サイ「サクラ、そろそろ起きないと。」
サクラ「ん…ん?」

照明を眩しがるサクラは、また布団を被ろうとする。

サイ「サクラ、一度予定を確認した方が良いよ。」

そう言われてゆっくり体を起こしたサクラは、時計とサイの顔を確認した。

サクラ「グッジョブ。」
サイ「それは良かった。」

親指を立てるサクラに、サイがにっこりと笑顔を返す。

サクラ「落書きとかしてないでしょうね?」
サイ「まさか。」

鏡を見て髪を直すサクラと、いつものやりとり。

サクラ「じゃ、ありがと。またね。」

なるほどやはり、この笑顔には弱い。

サイ「またね。」

と、閉じた扉に向かって呟く。
ふと台所に行くと、桜茶の茶筒を開ける。

サイ「本当に、いい香りだ…。」

窓の外は夕方を飛ばして暗くなっていた。
湯呑みを流しに置くと、愛用のスケッチブックと鍵を手に取る。

サイ「さて、ナルトはどこにいるかな?」


- おわり -
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