BLACK作
□桜色の香り。
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冷たい風が吹くとやはり冬なのだという事を再認識させられる睦月。
激務に疲れたサクラが火影直属の追手から逃れる為に隠れる場所は、同期の散らかった部屋でも、親友の花屋でもなかった。
―コンコン―
サクラ「サイ、いる?いなかったら勝手に入るわよ〜?」
―カチャ―
サイ「いなかったら入らないでよ。」
決して血色の良くない顔は、間近で見るにはやや上を向かざるを得ない。
サイ「また逃げて来たの?」
サクラ「人聞きの悪い事言わないでよ。休憩よ、休憩。…ふぁ…。」
大口を開けてあくびを一回。
どこで休もうかと室内をキョロキョロしていると、サイが一声。
サイ「ベッド使いなよ。」
サクラ「へ?」
首が取れるのではないかという程傾けながら、振り返り様に声を出す。
サイ「ん?あぁ、大丈夫。洗濯はちゃんとしてるから。」
そう言いながら棚から出すのは、サクラが来た時にしか開けられない桜茶だ。
サクラ「なんか病人みたいね。」
腰まで布団を掛け、座ったまま湯呑みを受け取る。
サクラ「いい香り…。」
サイもベッドに腰掛け、読みかけの本を手に…取ろうとしてやめた。
サイ「サクラ、なんで僕の部屋なんだい?他にも行く所はあるだろ?」
サクラ「んー…落ち着くから…かしら?」
サイ「それは…。」
本に書いてあった、という台詞は、サクラが嫌う台詞のひとつだ。
言葉をグッと我慢し、茶で流し込む。
サクラ「あとは…ここって静かじゃない。」
サイ「なるほど。確かにこの辺は、住人以外来ないからね。」