BLACK作

□祭の前の後の祭
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ナルト「ふい〜。終わった〜。」
サクラ「お疲れ様、ナルト。はい、麦茶。」

楽屋の畳に横になるナルトの額に、汗をかいたグラスを乗せる。

ナルト「っとと…サンキュー、サクラちゃん。って、あれ?サクラちゃん今日入ってたっけ?」
サクラ「ううん、でも今日で録り直しも編集も完了して完成だって聞いたから、待ち切れなくて来ちゃった。」

ナルトの隣に腰を下ろし、足だけ畳の外に投げ出して寝転がるナルトの靴を脱がせながら、サクラも自分用に容れた麦茶を口にする。

サクラ「まあ当然と言えば当然なんだけど、アンタは全部の話に出てるから大変よね。」
ナルト「それを言ったら、俺ってばサクラちゃんも全部の話に出ると思ってたから、正直意外だったってばよ。」
サクラ「そう?私に言わせれば、あの監督がヒナタを使わなかった事の方がよっぽど意外だったけど。」

口の中で氷を弄びながら、サクラがモゴモゴと話す。

ナルト「あー…、それってばなんか、企画の段階でボツになったって聞いたような…。」
サクラ「なにそれ?」
シカマル「コレの事か?」

声の方に目をやると、クシャクシャの紙を持ったシカマルが部屋の外に立っていた。

シカマル「楽屋の扉ぐらい閉めろよ。会話が廊下に筒抜けだぜ。」
サクラ「あらシカマル。だって節電とか言って、エアコンのリモコン、電池抜かれてるのよ?なんでエアコンて本体にスイッチ付いて無いのかしら。」
ナルト「つーか、今この階にいるの、どうせ俺達だけだろ?」
シカマル「だとしても、普段から言動に気を付けねーと、思わぬところで週刊誌にスッパ抜かれるぜ。」

クシャクシャの紙を団扇代わりに、シカマルが苦笑いを見せる。

サクラ「で、それは何?」
シカマル「実は俺は企画会議の段階から参加してたんだが、その時ボツになった企画案を面白半分で回収しといたって訳だ。ま、こんな事もあろうかと、ってやつだ。」
ナルト「おー。なんか面白そうじゃん。」
サクラ「私にも見せて。」

二人は立ち上がり、シカマルの両脇から紙を覗き込む。

ナルト「これだ、ひなたスネーク。」
サクラ「赤ペンで思いっきりバツされてる…。」
シカマル「これはアレだ…単純に…。」
サクラ「エロいのね?」
シカマル「…だな。」

サクラの楽しそうな指摘に、やむ無く肯定する。

サクラ「これは?さくらスコーピオン。」
シカマル「それか…。それはサクラが主演の作品で、かなり詰めたところまで出来上がってたんだが…。」
サクラ「相手役は懐かしのサソリさんよね?何か問題でも?」

シカマルはしばし考えた後、まぁいいかと一つ溜め息を吐く。

シカマル「さくらスコーピオン。傀儡に操られた少女ってのが副題案で、勿論主役はサクラ、お前だ。話の筋は、いつも誰かに守られてた少女が、誰かを守れる強さを手に入れる、って話なんだが…。」
ナルト「いいじゃんいいじゃん!なんか格っ好ぇーってばよ!」
サクラ「だからぁ、なんでボツなのよ〜?」

シカマルの袖を掴んで引っ張る二人に、シカマルの体は左右に揺れる。

シカマル「いや、これな、サクラが格好良過ぎるって言うか…。」
サクラ「それの何処がいけないのよ。」
シカマル「ナルト、要らねーんだよ。」
ナルト「に゛ゃ?!」
サクラ「あー…。」

ギャグ顔で固まるナルトのリアクションに、サクラも絶句する。

シカマル「だからボツなんだ。ボツになるにはそれなりの理由があるんだよ。」
サクラ「じ、じゃあこれは?」

ナルトが思いの外落ち込んでいるのを痛々しく思い、話題を変えようと他のボツ案を指差す。

シカマル「ねじスパイダーか。実はこれが一番、ギリギリまで残ってたんだけどな。」
ナルト「ネジと蜘蛛って事は…あのアレか!」
サクラ「鬼道丸さんね。」

かなり昔に共演した相手を、ナルトは必死に思い出そうとしている。

シカマル「蜘蛛の糸に絡まれた少年。運命という糸に絡まれて身動きが出来ない少年の苦悩、ってとこだな。」
ナルト「それもボツになった理由ってのが有るのか?」

ナルトの言葉に、シカマルはまたも苦虫を噛み潰した様な表情を見せる。

シカマル「言い辛いんだが…。」
サクラ「あ、なんとなく解っちゃった。」
ナルト「なんだってばよ〜?」

二つめの溜め息。

シカマル「画が地味なんだよ…。」
サクラ「やっぱり…。」

解るわ、と言わんばかりに、サクラがシカマルの肩に手を乗せる。

ナルト「俺ってば、そういうのは未だによく解んねーけど…。」
サクラ「ネジさんて、確かにイケメンだけど、華が無いのよね。」
シカマル「ま、役としては影が有った方が良いのは言うまでも無いんだが、見る人の事を考えるとどうしてもな。」
ナルト「そんなモンか?」
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