BLACK作

□神無月夜想曲
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ナルト「…で?」
エビス「サスケ君とルームシェアしているとは聞いていましたが、思ったより片
付いているじゃないですか。」
ナルト「はぁ…どうも…。って、一体どんな部屋を想像してたんだってばよ?」
エビス「私はてっきり、何かこう、縄張り争いみたいにテープとかが張り巡らさ
れているのかと。」
ナルト「あー…。」

ルームシェアじゃなくて同棲、とは言わなかったが、確かに同棲し始めの頃はそ
んな事をした覚えがあった。
初めに分割されたのはベッドだった。
狭い部屋に何故かダブルベッドひとつを持ち込んだサスケのせいで、二人で並ん
で寝るハメになったのを、喜び半分不安半分で怒鳴り散らしたものだ。
次に分けられたのは食卓、更にコンロ。
しかし、常に火力の弱い方を使わされるナルトの懇願により、巻き戻し的に縄張
りは解消されていった。
最後の縄張りが解消され、第三次掛け布団戦争が終結したその日、その日付が二
人の金庫の暗証番号であり、記念日の一つになった。

エビス「何故赤くなるんです?」
ナルト「へ?あー…若かったなー…と。」
エビス「何を訳の解らない事を。それよりナルト君、一見小綺麗ですが、結構埃
が溜まってますね。掃除しましょう。」
ナルト「今から?!」
エビス「そうです。その棚の上、それから窓のレール、換気扇も洗いましょう。

ナルト「なんで座るんだってばよ…。」
エビス「言ったでしょう?私は腰が痛いんです。」
ナルト「…むっつりスケベ。」
エビス「違います!ったたたた…。」

エビスの指示で掃除をするナルト。
いつの間にか、重曹がどうとか要らなくなった服をどうとか、主婦の様な会話で
盛り上がった二人であった。

ナルト「ふぅ、終わったってばよ。じゃあ、サスケの帰りは判んねーのか。」
エビス「そうですね。そもそも任務期限が四日ですから、急ぐ必要は無いですし
ね。」

ふとナルト越しにカレンダーを見たエビスは、明日の日付に印が付けられている
のを見付ける。

エビス「おや?明日は何か特別な日ですか?」
ナルト「ん?あー、別になんでも無いってばよ。」
エビス「そうですか。では明日はお昼前にお邪魔しましょう。」
ナルト「は?!明日も来るのかよ!?」
エビス「当然です。サスケ君が帰って来るまで、君の生活を指導します。」
ナルト(サ〜ス〜ケ〜!!!!)

何て事をしてくれたんだ、と机の下で拳を握るナルト。
この時程サスケの帰りを待ちわびた事もそうは無かった。

エビス「夕飯はどうするのですか?」
ナルト「あー…、買い物にも出そびれちまったし、一楽で済ますってばよ。」
エビス「そうですか。では私も御一緒しましょう。」
ナルト「え〜。」
エビス「心配しなくても、ナルト君の分も私が払って差し上げますよ。イルカ君
やカカシさんにも度々ご馳走になっているんでしょう?」

一食分の食費に釣られ、たまにはこんなのも良いかと思ったナルトだが、そんな
思いもすぐに打ち砕かれる事になる。

アヤメ「いらっしゃい!あら?またエビスさん…とナルト君?」
ナルト「ばんわー。俺ってば…」
エビス「野菜ラーメン二つ。あ、私は人参抜きで。」
ナルト「人のメシ、勝手に決めんなよ!?」
テウチ「何だ?結局そんな事になったのか?」

今日は変な日だなぁ…。
テウチはそんな事を考えながら、モヤシとニラの入った鍋を振る。

ナルト「どーせおごってくれるなら、好きなモン食わせてくれってばよ!」
エビス「ダメです。君は慢性的に野菜が不足しています。サスケ君が留守の間、
君の事を頼まれたのは私です。栄養失調で倒れられては私の責任です!」

溜め息を吐くナルトの横で、エビスは眼鏡を直しながら胸を張る。

エビス「うぐっ!…いたたたた…。」
アヤメ「エビスさん、ギックリ腰なんだから無理しないで。」
ナルト「…ダセーってばよ。」
エビス「ナルト君!…ったたた…。」

結局ナルトは野菜ラーメンにチャーシューを足し、どうせ奢りならと替え玉を三
つも頼んだ。

エビス「という訳で、十月は神無月と言うのです。」
テウチ「昔は雷無月とか言ったりもしたもんだけどな。」
ナルト「へー。じゃあサイとかゲジマユの縁は相当困ってるんだろうな。あー、
あと…」
テウチ(ナルト!?)
エビス(それは…!)
アヤメ(???)
ナルト「早くイルカ先生にもいい人を見付けてあげて欲しいってばよ。」
テウチ(ほっ…。)
アヤメ「ふふふ、そうね。」
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