BLACK作

□神無月夜想曲
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今日は変な日だなぁ…。
テウチはそんな事を考えながら、モヤシとニラの入った鍋を振る。

ナルト「どーせおごってくれるなら、好きなモン食わせてくれってばよ!」
エビス「ダメです。君は慢性的に野菜が不足しています。サスケ君が留守の間、
君の事を頼まれたのは私です。栄養失調で倒れられては私の責任です!」

溜め息を吐くナルトの横で、エビスは眼鏡を直しながら胸を張る。

エビス「うぐっ!…いたたたた…。」
アヤメ「エビスさん、ギックリ腰なんだから無理しないで。」
ナルト「…ダセーってばよ。」
エビス「ナルト君!…ったたた…。」

テウチの変な1日は、開店直後から始まっていた。
早い昼食を食べに来たのは、エビスとサスケ、さらに中忍の神月イズモの三人連
れだった。

テウチ「これは…どういった三人一組だい?」
サスケ「正確には、三人一組だった…だがな。」
エビス「面目無い…。」

イズモの肩を借り椅子に座ったエビスは、卓に両手を付き頭を下げた。

イズモ「エビスさん、気にしないで下さい。俺達なら二人で行けますから。」
エビス「新人教育は私のライフワークと言っても過言ではありません。なのにこ
んな日に限って…はぁ…。」

眼鏡の端から生じた小さな水溜まりが情けなく卓を濡らす。

テウチ「サスケ達が新人だって?一体何の任務なんだい?」
サスケ「西の大社まで行って、御守りやら護符やらを受け取ってくるだけだ。…
トマトラーメン。」
イズモ「トマトラーメン?そんなのあったか?」
テウチ「へへっ、裏メニューってやつだ。…そうか、神在祭か。」
エビス「えぇ、彼等は常識力も高く、内政、外交能力も高いですから、積極的に
催事に参加させて人脈を広げろと火影様から申し遣ったのですが…。」
イズモ「去年の御守りと手土産の入った袋を全部一人で持とうとして、ギックリ
とね。…豚骨、あと卵焼き。」
サスケ「アホだ。」
エビス「面目無い…。…私は野菜ラーメンを。あぁ、人参抜きで。」

テウチは自分より若いエビスの姿を見て苦笑いを浮かべる。

テウチ「じゃあ、エビスさんは留守番かい?」
エビス「はい…。これでは何も出来ませんから…。」
サスケ「だったら、ナルトでも見ててくれ。アイツに変な…」
エビス「わかりました!以前から君達には一度恩を返さねばと思っていたのです
!」

この時のサスケの真意は「ナルトに変な虫が付かない様に見ててくれ」であり、
エビスの心中は「新人教育を任された!」であったのは、想像に難くない事だと
思われる。

イズモ「親書も地図も持ったし、問題ありませんよ。」
テウチ「ヘイ、お待ち。」

タイミング良く出揃ったラーメンのラインナップを見てテウチは「この三人、合
わないだろうなぁ」と長年の勘で思うのであった。

エビス「急げば明日の朝には帰って来れるでしょう。まぁ、観光名所も沢山あり
ますから、期限さえ守れば幾らゆっくりでも構いませんよ。」

そう言ってサスケ達を送り出すと、エビスは腰を擦りながらナルトの部屋を目指
して歩いて行った。
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