BLACK作

□天乃河狂詩曲
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見馴れたやりとりに、シカマルの言葉にもつい笑いが混じる。

ナルト「何でだってばよ〜?」
サクラ「だってアンタとのデートって、デートじゃ無いんだもの。それに、今夜はココでシカマルと一夜を共にするから。」
シカマル「マジかよ…。」

徹夜決定の宣告に、シカマルの肩が沈む。

ナルト「じゃ、じゃあさ…えと…俺ってば…。」
サクラ「どうせ何か相談でしょ?この場で済ませなさいよ。シカマルなら何聞かれたって問題無いでしょ?」
ナルト「誰にも言わねぇか?」
シカマル「んなめんどくせー事するかよ。」

しばし考えた結果、ナルトは扉を閉めてその場に正座をした。

サクラ「で、何よ?」
ナルト「あ、あのさ…た、七夕って…、七夕パーティーって、何を着ればいいんだってばよ?」

一瞬の、長い長い沈黙を破ったのは、意外にもシカマルだった。

シカマル「…やっぱ浴衣か?」
サクラ「えっ?あー…そうね。うん、浴衣かしら?」

くだらない質問に完全に思考停止していたサクラは、シカマルの言葉で我に帰った。

サクラ「七夕って…サスケ君と?」
ナルト「ん。でも俺ってば、浴衣なんて持って無いってばよ。」
シカマル「この前潜入任務で着た浴衣、汚して買取りになってたじゃねーか。アレ着ろよ。」
ナルト「アレってば、女物だってばよ?」
サクラ「いいじゃない。サスケ君、喜ぶわよ。」

その言葉に微かに頬を染めたナルトは、恥ずかしそうに下を向く。

ナルト「変化しちゃ…ダメかな?」
シカマル「ダメだろ。」
サクラ「当然。それよりナルト、アンタ帯結べるの?」
ナルト「この間の任務の時に習ったから…多分まだ覚えてる。」
サクラ「じゃあ心配無いわね。早く帰って仕度なさい。」
ナルト「ありがとうございました。」

三指を付いて頭を下げるナルト。
サクラはナルトを立たせると、手の甲でシッシッとナルトを帰す。

シカマル「いつもあんな感じか?」
サクラ「そう。口ではデートとか言ってるけど、十中八九恋愛相談よ。」
シカマル「経験値は大差無いのにな。」

そう言って笑うシカマルを一瞬睨んだサクラだったが、言い返す体力を惜しんで腰を下ろした。

更に数十分後、カチャッと小さい音がしたと思った矢先、髪が僅かな風を感じて揺れた。

サスケ「サクラ、聞きたい事がある。」
サクラ「ぎゃ!突然現れないでよ!」
シカマル「今度はサスケか…。」
サスケ「七夕ってのは…」
サクラ「アンタはアレよ!大蛇丸のトコで着てた服、アレで良いじゃない。」
サスケ「何故服の事だと解った?」
サクラ「大体解るわよ。って言うかサスケ君は、小さい頃から着物くらい着てたでしょ?」
サスケ「それはそうなんだが、今回はナルトと二人きりだからな。」
シカマル「なぁサスケ、ひとつ聞きてーんだけど、今回の企画、お前発信か?」
サスケ「そうだが、それがどうかしたか?」

不思議そうな顔をして答えるサスケを見て、シカマルは片目を瞑りニヤリと笑う。

シカマル「まさかお前、短冊にナルトの欲しいもん書かせて、誕生日に渡すつもりじゃねーだろうな?」
サクラ「あーなるほど。確かに、あと三ヶ月もすればナルトの誕生日だったわね。」
シカマル「その頃には、ナルトも短冊に何を書いたかなんて忘れてるだろうしな。」
サスケ「…。」

しばしの静寂の後、サスケの形をしたものはポンッと消えた。

サクラ「図星ね。」
シカマル「くくくっ…。」
サクラ「どうしたのよ?」

堪え切れず笑い出したシカマルを、横から覗き込む。

シカマル「いや、あのナルトが、欲しい物なんて書くと思うか?」
サクラ「あー…多分書かないわね。」
シカマル「だろ?多分ナルトなら…」
サクラ「お金じゃ買えない抽象的な事を書くわね。」
シカマル「それを見たサスケはどうするんだろうな?」
サクラ「さぁね。きっと、何枚も書かせるんじゃない?」
シカマル「俺が思うに、サスケが一番望んでる回答は…」
サクラ「『サスケが欲しい』ね。」

二人は珍しく、しばらく腹を抱えて笑った。
そして、数日後にナルトを取り調べるという密約を結んだ。

後日、ナルトが吐いた情報のひとつによると、折角着た浴衣だが、ものの数分でぐちゃぐちゃになってしまったらしい。
そして、飾ってあった笹の枝は、朝起きたらすっかり消えていたそうだ。
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