BLACK作

□混ぜて捏ねて愛を籠めて
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ナルト「だよなぁ…。ウチ、小麦粉無かったもんなぁ…。」
サスケ「三種類あったから中間のを選んだ。」
ナルト「中力粉か…ドンピシャだってばよ…別名うどん粉って聞いた事無いか?ラーメンは、強力粉と薄力粉を混ぜるんだってばよ。」
サスケ「混ぜたら中間になるだろ?」
ナルト「そう簡単じゃねーんだよ!」
サスケ「…ふん、まぁいい。じゃああの色と質感はどうするんだ?サフランかターメリックを入れようかと迷ったんだが。」
ナルト「んなもん入れンな!あれは玉子を繋ぎとして加えるんだってばよ。それから、茹でる前に手で揉むと縮れが出る。」

好きこそ…と言わんばかりに、人差し指を立てて説明するナルト。
楽しそうに講釈を垂れるナルトを見て、サスケもつい弛い表情になる。

サスケ「で、お前は実際、ラーメンを打てるのか?」
ナルト「それは無理。つーか面倒い。けど、明日は俺が作るから、最高のラーメンを食わせてやるってばよ。」

そう言うとナルトは、食卓に戻り腰を下ろす。
箸を持ち丼をかき混ぜると、再び固まりサスケを呼ぶ。

ナルト「…麺に衝撃を受け過ぎて気付かなかったけど…コレは何ですか?」

箸の先には球状の物が刺さっていた。

サスケ「プチトマトだ。」
ナルト「…何で?」
サスケ「可愛いだろ?」
ナルト「は?」
サスケ「可愛く無いか?プチトマト。」
ナルト「あー…ま、いっか。」

二人は味噌煮込みうどんを食べ、二人で洗い片付けをした。

ナルト「正直…美味かった…。」
サスケ「それは良かった。」

エプロンを着けて洗い物をしていたサスケは、振り向き様にニッコリ笑ってみせた。

ナルト「ちょ…それ禁止…。俺ってば溶ける。」

翌日…も午後11時を回り、ナルトはウトウトしながらサスケの帰りを待っていた。
カチャリと小さな音がすると、忍独特の無音歩法でサスケが部屋に入って来た。

ナルト「おかえりー。」
サスケ「!? 起きてたのか。」
ナルト「麺類は作り置きが出来ないんだってばよー。」

頬を卓に付けたまま、抑揚の無い声でナルトが応える。

サスケ「すまなかった。任務中に想定外のアクシデントが起きてな。対応に追われていたら時間が掛かった。」
ナルト「いえいえ、よくある事ですってばよ。」

薄目のまま、口しか動かさないナルトを横目に、サスケは荷物を置き上着を脱ぐ。

サスケ「悪かったと思ってる。飯にしてもらえるか?これでも楽しみにしてたんだ。もう腹が減って死にそうだ。」
ナルト「お腹が空いてれば、何食べても美味しいですよねー。」
サスケ「…頼むから、拗ねるなよ。」

サスケがナルトの頬に唇を寄せた瞬間、スッとすり抜けたナルトは、台所に立ち鍋を火に掛ける。

ナルト「すぐ出来るから、手を洗ってきなさい。」
サスケ「あ…あぁ。」

サスケが手洗いを済ませて戻って来ると、食卓には二人分のラーメンとおにぎりが並べられていた。

サスケ「やっぱり食べてなかったか…。待たせて悪かったな。」
ナルト「いいから座れって。テウチのおっちゃんと俺が試行錯誤して作った特製ラーメンだ。」
サスケ「特製?」

サスケは腰を下ろすと、麦茶を一口飲みナルトを見る。

ナルト「俺が夢で見たラーメンを、再現してもらったんだってばよ。」
サスケ「夢?」
ナルト「ま、食ってみろって。」
サスケ「あぁ。…いただきます。」
ナルト「いっただっきまーす。」

サスケはまずスープを、そして麺を口に運ぶ。
ナルトも相当腹が減っていたのか、既におにぎりを一つ完食している。

サスケ「これは…トマトか?」
ナルト「ん。ベースは鰹出汁だから食べ易いだろ?」
サスケ「…美味い。」
ナルト「麺もこだわったしな。おっちゃんにも苦労掛けたぜ。」

サスケは箸を置かずに、左手でおにぎりを取る。

サスケ「具は?」
ナルト「全部おかか。」

ナルトが言うより早く、おにぎりは具が見える程欠けていた。

ナルト「本当に腹減ってたんだな。」
サスケ「言っただろ?死にそうだったんだ。」
ナルト「へいへい。」
サスケ「おかわりは有るのか?」
ナルト「米ならあるけど、麺はもう無いってばよ?」
サスケ「じゃあ、ここに少し米を入れてくれ。」

そう言いながら丼をナルトに渡す。

ナルト「トマト雑炊…。」
サスケ「美味いスープだ。ただ飲むのは勿体無い。」
ナルト「そりゃ光栄だってばよ。デザートもあるから、その分のスペース空けとけよ。」

サスケはおにぎりの皿を空にすると、雑炊を一気に流し込む。

ナルト「それ、ただ飲むのと大差なくねー?」
サスケ「…っっっぷはぁ!ふー…食った…。」

まるでそれまで息を止めていたかの様な深い呼吸と共に、叩き衝けるかの様に箸を置いた。

ナルト「すぐにデザートにするか?」
サスケ「あぁ、貰おう。」

語気は穏やかだが、すっかりテンションが上がってしまっている事に、ナルトは気付いていた。

ナルト「もう遅いんだから、あんまり大声出すなよ?…って…もうこんな時間?!」
サスケ「お前こそ声がデカい。…なんだ、もう1時か。」
ナルト「あぁぁぁぁ…。」
サスケ「どうした?」

ナルトは、冷蔵庫から出したデザートを手に、時計を見たまま凍結していた。

サスケ「どうした?ナル…」
ナルト「ちょいやぁー!!!!」

ナルトは奇声を発しながら、何かをデザートに突き刺した。

サスケ「ナ…ナルト?」
ナルト「…な…じゃ…ったのに…。」
サスケ「おい…。」
ナルト「こんなハズじゃ無かったのに…。」
サスケ「だから何が…」
ナルト「こちらトマトのコンポートになりますぅぅ〜〜!!!!」

そう言いながら器を食卓に置くと、全速力でトイレに駆け込みカギを掛けた。
コンポートの湖の中央に山の様にあしらわれたトマトのゼリー、その山頂には一枚のチョコプレートが垂直に突き立てられていた。

- お誕生日おめでとう -

徐々に広がる亀裂に耐え切れず、プレートは皿の縁にコンと倒れた。

サスケ「ナルトー、食うぞー。」
ナルト「0時丁度に言うつもりだったのにぃ〜。」
サスケ「泣くな。元はと言えば、俺の帰りが遅かったのが原因だ。そうだろ?」
ナルト「…。」
サスケ「お前の分もあるんだろ?俺一人で食わせる気か?一緒に食べたいなー…なんて…。」

サスケが自分の言葉に照れていると、トイレの扉がゆっくり空いた。
中から出てきたのは完全にナル子だった。

ナル子「サスケが悪い…よな?」
サスケ「あ…あぁ、俺が悪い。」
ナル子「認めるな?」
サスケ「認める。」

徐々に帰ってくるナルトを、なだめる様に慎重に返事をする。

ナル子「じゃあ罰として、俺は今日一日この格好でいるから。」
サスケ「おいおい、折角の誕生日だぞ?」
ナル子「罰ですから。」
サスケ「外出もか?」
ナル子「罰ですから!」

世間の目はナル子を求めている時もあったが、サスケ自身はやはりナルトのままが好きだった。
誕生日にナルトの姿が見れないのは、充分過ぎる罰だった。

サスケ「わかったよ…。とにかく食おうぜ。コレは完全にお前が作ったんだろ?」
ナル子「です。」

二人はデザートを食べ終わると皿に水だけ張り、もう遅いから寝ようと話した。
ナルトはサスケの腕を枕にし、背中を向ける様にして丸まる。
サスケはそれを抱き締める様に腕を回す。
これがいつもの定位置だった。

サスケ「おやすみ。」
ナル子「…おやすみ。」

サスケ「…だから前にも言っただろう?泣いた時に目を擦るなって。」
ナル子「〜〜〜!!!!!!」
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