BLACK作

□桜の見た四月馬鹿
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いつの間にか話は、三人でお花見をしようという事になった。
サクラ達が買い物をしている間にヒナタは荷物を置きがてら「じゃあ飲み物も持って来るね。」と一旦家に戻った。
適当に菓子の詰め合わせを作ってもらい、木の葉の門でヒナタを待つ二人の手には、お揃いの桜色の包みが提げられていた。

イノ「アタシ…こんな高いおしるこ初めて買ったわ…。」
サクラ「包んでるとこ、見た?これほとんど外身の値段よ。っていうか確実に贈答用よ。」

品書きの値段に一瞬躊躇いながらも、好奇心に押されておしるこを包んで欲しいと頼んだ二人。
失礼かと思いつつも、気になって見ずにはいられなかった二人は、奥で包む店員を終始見守っていた。
棚に並ぶ材料を見るだけでも、店のこだわりが窺える。

イノ「あら、栗が入ってるのね。年間通して仕入れるのって大変なのよねー。」
サクラ「砂糖や小豆も良い物を使ってるのは解るけど、そこまで高く付くものかしら?…って、まさかアレ…。」

サクラは店員が持ってきた容器に気付くと、大体の顛末を理解した。
店員の手には金で装飾された立派な漆器が二つ、それにたっぷりとおしるこを入れると、縁を丁寧に拭き蓋をする。
次に飾り紐を取り出すと、予め切り込みが入った器の脚に掛け、蓋が遊ばない様に十字に結ぶ。
それを木箱に入れて蓋をすると、桜色の薄手の布で手際良く包んでいく。
布で持ち手を作り提げられる様にし終えると、「お待たせ致しました」と店員がやって来た。
品物を受け取り会計を済ませた二人は、無意味な緊張を腕に感じながら木の葉の門へと向かった。

イノ「…これ、自宅用で買う人っているのかしら?」
サクラ「知らないわよ。いいじゃない、美味しく頂きましょ。」
イノ「アンタ、意外と冷静ね。」
サクラ「自分にご褒美だと思えば悪い買い物じゃ無いわ。包みも可愛いしね。」
イノ「ま〜ね〜。にしても、恐るべきは甘栗甘よね。贈答用まで扱ってるとは知らなかったわ。」
サクラ「他里から来る人もいるから、お土産としての意味合いもあるのかもね。…あ、ヒナター!」
ヒナタ「ごめんなさい、お待たせして。あっ、おしるこ買ったんだね。」
サクラ「買っちゃったわよ。」
ヒナタ「可愛い包みだよね。うちも器と包みばっかり増えちゃって、かと言って捨てられないし。」
イノ「いたわ。自宅用に買う人。」
ヒナタ「お父様がよく買って来る…」

そう言い掛けたヒナタが何かを察知し、眼に力が入る。

ヒナタ「避けて!」

そう言われて飛び退いた各々の中心に、門の上から何かが落ちてきた。
ドスッという鈍い音に目をやると、それは見覚えのある形をしていた。
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