BLACK作

□春風花風
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ひとしきり酒と果物を楽しむと、そろそろ太陽も頭を垂れてきた。
もう春とは言え、風が出てくるとまだ少し肌寒い。

三成「曹丕、そろそろ中に入らぬか?風邪などひいてもつまらぬしな。」
曹丕「…三成、お前に話しておかなくてはならない事がある。」
三成「なんだ?帰る気になったか?」
曹丕「…それも考えた。いや、そうすべきなのかもしれん。」
三成「当たり前だ。貴様が居なくて魏はどうするのだ。」
曹丕「………子が…。」
三成「なに?」
曹丕「子が…出来たのだ。」
三成「奥方にか?」
曹丕「…私にだ。」
三成「それは…側室という事か?」
曹丕「いや…私の腹に子がいるのだ…。」
三成「何を馬鹿な事を…。」
曹丕「お前は知らぬだろうが、漢には様々な薬が有ってな。男でも子が出来る様になる薬が有るのだ。」
三成「それを貴様が?!…まさか…俺の子か?」
曹丕「私は他の誰の寝所にも行ってはいない。」
三成「それはそうだが…いや…しかし…。」
曹丕「だから帰る事にしたのだ。帰って我が子として産み、育てる。」
三成「そ…いや…う…しかし…くっ…。」
曹丕「…。」
三成「俺の子だ!俺が育てる!」
曹丕「何を馬鹿な…」
三成「馬鹿は貴様だ!たった今、俺の子だと言っただろう。ならば俺が育てるのが道理だ!なんなら貴様もついでに俺の妻として迎えてくれるわ!!」
曹丕「…それは本当か?」
三成「はぁ…はぁ…ん?何がだ?」
曹丕「私を妻として迎えてくれるというのは本当かと聞いているのだ。」
三成「あ…あぁ。武士に二言は無い…が。」
曹丕「それは嬉しいな…」

茜色の空の中、二人の距離が春風すら抜けられぬ程近づく。
ようやく息を整えた三成が目を閉じる…。
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