BLACK作

□春風花風
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明け方も先日までの寒さは無くなり、桜が春の装いを始めた頃、魏の王子は未だ佐和山に居た。

三成「帰れ。」
曹丕「聞こえんな。」
三成「返事をしているではないか…!」
曹丕「暖かくなって狐が出てきたか?何やら鳴き声が…」
三成「無視をするとはいい度胸だ」
曹丕「狐さん、苺を所望する。」
三成「ほぅ?」

その時、タイミングを図ったかの様に、要らぬ気を回した家臣がやって来た。

左近「殿、庭の桜の下に蓙(ござ)を敷かせました。花見酒など如何ですか?」
曹丕「左近、私は苺を所望するぞ。」
左近「ははっ。この左近、手抜かりはございませんよ。実は先日、立花のお嬢さんから大量の荷が届きましてね。熊本苺に温州蜜柑、日向夏、少し早いですが琵琶もありましたね。」
曹丕「三成、何をしている。花見だ。仕度をしろ。」
三成「貴様等こそ、俺を無視して話を進めるな。それに仕度をするのは俺ではない。左近だ。」
左近「御意。」
三成「あ…待っ…」

既に左近の姿は無く、曹丕は着物を着直していた。
三成は大きな溜め息を一つつき、櫛に手を伸ばした…。
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