BLACK作

□ペダルビート
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「七夕特別企画!納涼度胸試し大会〜!」

と高らかに叫ぶ声を聞き付け、ナルトも人混みに混じり司会者を仰ぐ。

「今年の催しは度胸試し!参加者は身体を拘束され、正面から迫り来る恐怖にどれだけ耐えられるかを競ってもらいま〜す!」

ざわつく周囲を他所に、ナルトは小さく拳を握る。

ナルト(俺向きだってばよ!)
「え?迫り来る恐怖って何だって?それではゲストに御登場いただきましょう!皆さん御存知の動物タレント、ナツコちゃ〜ん!」

司会者に呼ばれて現れた調教師の男性の身体には、全身に巻き付いてもまだ肢体を持て余す程巨大な大蛇の姿が有った。

「げっ俺あれテレビで見たことある。」
「あれってアナコンダ?」
「アミメニシキヘビじゃなかった?」

ギャラリー全体が一歩引いた気がしたが、ナルトは微動だにしなかった。

ナルト(やれる!こういうのは危険が無いように出来てるもんだってばよ!)

珍しく打算を働かせたナルトを知ってか知らずか、マイクを受け取った調教師が一歩前に出る。

「えー、ナツコには毒はありません。しかし、機嫌が悪ければ当然咬みます。あと、たまに絞めてきます。体調に不安のある方は御遠慮下さい。その上で御参加下さる方は、当方の責任を問わない旨のこちらの書類にサインをして頂きます。」
「はい!受付は只今より17:00まで。結果発表は19:00を予定しておりま〜す!」

やけにゆっくりしっかり話すその言葉に、ざわつきはいつしか絶句に変わっていた。
そして、一人また一人とその場を立ち去るのであった。

ナルト(ややややや、やってやるってばよ!び、ビビ、びビッてねーし!)

これは武者震い、そう自己暗示を掛けながら受付に向かう。
エントリーを終えると、別会場に案内された。

「競技中、部屋には参加者の方とナツコの二人きりです。椅子に固定された参加者の方の前には、長さ10m傾斜10度の透明のパイプがあり、その反対側からナツコを投入します。我々は室内に設置された4台のカメラから、別室にてその様子を確認しています。参加者の方が声を出した時点で競技は終了となり、パイプが一気に逆側に、
ナツコが登れない角度まで傾きます。しかし、大丈夫、まだ平気、等の参加者の方々自身の啓発と見られる発言は、続行として捉えます。また、先程の書類にも明記してありましたが、この映像はテレビで放送させて頂く可能性があります事を御理解下さい。……補足ですが、万が一トラブルが発生した場合、我々が皆様の元に到着す
るまで40秒程度掛かるという報告が届いておりますので、危機を感じたらなるべく早く御報せ下さい。」

淡々と説明する担当者の低い声に、何人かの参加者はトイレに行ったきり戻る事は無かった。
かくしてナルトの順番が訪れ、あからさまに処刑台を意識した造りの椅子に拘束され、10m先から大蛇に見下ろされる形となった。


参加者は互いの結果を知らないので競技の詳細は割愛するが、便宜上ナルトの結果だけ御報告しよう。
かくしてナルトとナツコの戦いは、ナルトの“目を瞑ってれば大丈夫”作戦によって、テレビ的に全然面白くない絵面となった。
そして、スルスルと這い寄って来たナツコがナルトの鼻をピロッと舐め、「んぁっ!」っという吐息と共に競技終了となった。

「結果、0cmでーす。」

その声に確かな手応えを感じたナルトは、19:00までブラブラ時間を潰し、遂に結果発表の時が訪れた。
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