BLACK作

□とある忍術の広域雷撃(サンダーボルト)
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秋の夜の静かな川面に、月に照らされた二人の男が写される。

一人は絹の様な白い肌に黒い髪、全てを呑み込む宇宙の様な黒い瞳。
一人は金糸の様な髪を風になびかせ、強い意思を湛えた空色の瞳。

暫く見つめ合った後、先に動いたのはサスケだった。

サスケ「いくぞ。」

左手を真っ直ぐ伸ばし右手を添える。
「はっ!」と力を込めると、掌から放たれた雷撃は一直線にナルトに向かった。
ナルトは避ける素振りも見せず、サスケを鏡に写した様な姿勢をとる。
パーーン!と乾いた音と共に、雷撃は弾けて消えた。

サスケ「やっぱり効かねぇか。ならコイツで!」

サスケは棄てられていた壊れた傘を手に取ると、目一杯の電気を流す。
高圧電流を流された傘の骨は、細かく震えてチチチチチッと鳴き声を上げる。

ナルト「おい!?獲物は反則だろ?!」
サスケ「問答無用だ!」

傘を下段に構えると、全速力で突進する。
構え直したナルトが最短距離で突っ込んで来るサスケにたじろいだ瞬間、視界からサスケが消えた。

ナルト「な!?上か?!」
サスケ「下だ。」

限界まで腰を落とした態勢から、全力で逆凪に切り上げる。

サスケ(取った!)
ナルト(避けきれねー?!だったら!)

ナルトは右手を下に向け構え、サスケの手元にだけ集中する。

サスケ(選択は悪くない。だが、この場合は防御姿勢を取るべきだった。それでも骨の数本は頂くがな!)

サスケの眼もナルトの右手だけに集中していた。
腕を取られさえしなければ避けられる事は無い。
雷撃が効かなかったとしても直接打撃ならダメージを与えられるだろうと踏んでいた。
しかし、ナルトの右手は真っ直ぐ傘の方に向かってきた。
パーーーン!!
一層大きな音を立て、傘はひしゃげて弾き飛ばされた。
サスケは上から何かに抑え付けられる様な圧を感じた。
ナルトはよろけて後ろに倒れそうになる。
激しい衝撃に川は波立ち小石が飛び散る。

サスケ(!? そうか!風だ!それも半端な風圧じゃねぇ、竜巻クラスだ!だが、見切った!右手からしか発生できない!)

両膝に力を入れ飛び上がると、ナルトの右手を掴みグッと引き寄せる。

サスケ(これで風は発生出来ない!このまま全力で雷撃を叩き込んで…!)
ナルト「あ、サンキュ。」
サスケ「?」
ナルト「支えてくれて。」

(カブト「あぁ、昔流行った好きな人に冷たくするやつですね?たしかツン…ツン…?」)

サスケ「〜〜〜〜〜!」
ナルト「どした?」
サスケ「はっ離せ!このウスラトンカチ!」
ナルト「えぇぇぇ!!」
サスケ「くそっ!殺してやるっ!」
ナルト「ちょっ!待て待て待てぇい!待つってばよ〜〜〜!!!」


数十分に渡る不毛な追いかけっこに諦めを付けサスケが家に着いたのは、もう日が変わるかという時間だった。
ヘトヘトになったサスケがドアノブに手を掛けると、グニっという何とも言えない柔らかな感触が出迎えた。

サスケ「なんだ?うわっナメクジ!なんでこんな所に…」

そう言いながら恐る恐る顔を上げドアに目をやると、扉一面にびっしり張り付いたナメクジが『悪霊退散』の文字を形作っていた…。
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