雛鼠作

□初めてのお願い
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俺が任務とその他いろいろを終えて家に帰ると、サスケはもう寝ていた。
まだ寝るには早い時間だけど・・・、大変な任務だったのかもしれない。
そんなことは俺にも解ってるけど、任務に関係なく頑張ってきたその他いろいろはサスケが起きていないと意味がない。
明日はまた朝から任務だし、日が変わると決心が鈍りそうだから・・・・。
俺が側に寄っても起きないサスケに、悪いと思いつつ肩に手をかけた。

初めてのお願い

「サスケ、サスケ」

サスケは、眠ると陥るいつもの暗い闇の中にいたけれど、ナルトの声をきっかけにそこから光の中に放りこまれる。

「サスケ!」

少し強くなった呼びかけに覚醒が促されて、少し瞼を持ち上げる。
目を開けると入ってくる金の色に、また目を閉じる。

「寝んな」

ピシッ

冷静な突っ込みとともに、額に軽い痛みが走る。
何とか体を起こそうと試みると、さっき額をはじいた指がサスケの指に絡まる。
そのまま上半身を引っ張り起こされた。

「大丈夫か?まだ寝ぼけてるか?」

顔を覗き込まれて、サイドテーブルに載っていたコップを渡される。
とりあえず水を飲むと、いくらか目が覚めてきたようで、頭がはっきりしてくる。

「お帰り、ナルト」

コップを手渡しながらそういうと、ナルトは笑顔になる。

「おう、ただいま。お前もお帰り」

周りを見るとまだ暗い。
時計は、深夜と呼ぶには少し早い時間をさしている。

「どうした?」

サスケはまだボーっとするのを堪えてナルトに聞く。
ここのところ、すれ違いで任務についていたせいで、まともに顔を見るのも久しぶり、とはいえ普段のナルトなら眠らせてくれているはずだ。
なぜ起こされたのか疑問できくと、ナルトがあからさまに動揺し始めた。

「あ・・・・ああ、いや・・・・。早い時間だったからメシ、どうしたのかと思って・・。」

目線を明後日の方向に飛ばして、焦りでどもりながらいう。

「もう先に食った。お前の分は冷蔵庫に入ってる」

疲れていたので、惣菜で済ませてしまったと付け加えると、ナルトは両手を振る。

「いや、十分だってば、疲れてんのに起こして悪かったてばよ。」

サスケの顔を見ながらそういうと、ナルトはまたそわそわし始めて目線が泳ぐ。

「何かあったのか?」

あまり見たことのないナルトの姿に、少し不安を感じる。

「い・・・いや、なんでもないってばよ!そ、そうだ!風呂、風呂はいったか?」

必死に話すことを考えている様子に不信感はつのるが、悪いことを隠している感じでもないので、サスケはとりあえず言及は保留にしておく事にした。

「シャワーを浴びた。湯ははってない。」

サスケは前日からの任務で一睡もしていなかったので、さっさと寝るためにシャワーも食事も軽く済ませていた。

「そ、そうか。そうだよな。いや、お前が入るなら風呂入れようと思ってさ。」

そういった後、ナルトはうつむいて黙ってしまった。
何かを話そうとしていることは解るが、何を言いたいのかは解らない。
あまりの挙動不審ぶりに、サスケにイタズラ心が生まれる。

「他にないのか?なければ寝るぞ。」

布団にもぐろうとすると、ナルトに布団をつかまれた。

「何だ?なんかあるのか?」

うつむいたナルトに意地悪く、もう一度聞く。
すると、少しすねた顔を上げて上目づかいでにらんでくるが、顔はまっかだ。

「サ、サ、サクラちゃんに言われて・・・・。で、でも、俺よく解んないから調べてて、それで今日遅くなったんだってばよ。」

どもり過ぎてるうえに言いたいことはさっぱり解らないが、黙って先を待つ。

「そ・・・・それでも良くわかんなくて、あってんのかどうかわかんねーけど。」

どんどんナルトの布団をつかむ力が強くなっていく。
そのまま、またナルトはうつむいて固まってしまった。

(ほっとくと、ずっと固まっていそうだな。)

「サクラに何を言われたんだ?」

気になるのでそう聞くと、収まりかけていた顔がまた赤くなる。

「サ、サクラちゃんがそういうことは、・・・・ちゃんと言わなきゃだめって」

だんだん小さくなっていく声に、サスケは布団から出てたたみの上にいるナルトと向き合う。

「そういうことって何だ?」

いい加減、こっちを見ないナルトに焦れて、頬を包んで自分の顔に向ける。
でも、ナルトはサスケと目が会うと、目線をそらしてしまう。
目をさまよわせながら唸るナルトだが、サスケの手の力がだんだん強くなるので、観念したのか深く息を吸う。

「普段してることでも、ちゃんと言わないと・・・・つたわらないから。きちんと自分でも言わなきゃだめだって。」

ゆっくりとそう言ったナルトが、サスケの部屋着をつかむ。
そして、真っ赤な顔を横に向けて口を尖らす。

「サクラちゃんが言ったからだからな!そ、それに!本に書いてあったことだからな!」

必死に、自分で考えたことではないと主張する。
と、突然ナルトが勢いよくサスケの首に抱きついた。
不意をつかれて倒れかけたが、何とか踏みとどまってナルトの背中に腕をまわす。

「ままままいばんキキキキキスキスししってくれってばよ!」

噛みながら、最後は叫んでしまったが、何とか伝えたいことを伝えられたと、ナルトはホッと力を抜く。
次に固まったのはサスケだ。
拒否はされないから好かれている自信はあった。
でも、告白したのも一緒に暮らすよう提案したのも夜のアレも、全てサスケからアクションを起こしていたので、ナルトからはっきり恋人としての欲求をされたのは初めてで・・・。
サスケは信じられなくて、夢なのかと思いながらも嬉しくて頭の中が真っ白になる。

がばっ

次の瞬間ナルトとサスケの位置が変わり、ナルトは布団の上に押し倒される。

「まてー、俺が言ったのはキスだってばよ!」

インナーのすそから入ってくる手を必死に抑えて、ナルトが叫ぶ。

「キスもする」

そう言って深く口付けをしてくる。
流されそうになりながらも、ナルトはサスケの髪を引っ張って引き剥がす。

「任務に障るからやめろ!」

口を拭きながらサスケをいさめようとするが。

「安心しろ、明日は休みだ」

髪の痛みに負けていったんは離れたサスケだが、再度顔を近づけてくる。

「俺は朝から任務だ!」

ナルトが本気で暴れると、サスケもようやくひいた。
ひいたが、そのままナルトをどけて無言のまま布団に入り込み背を向けて寝に入ってしまう。
その様子に、すねたサスケはめんどくさいと考えながらも、自分で甘い雰囲気を作っておいて本気で拒否してしまったことに罪悪感を感じる。

「あ、明日は、早く終わる予定だから・・・、帰ってきたら・・・その・・・・いいから」

スル事が嫌なわけではないので、恥ずかしいがサクラに言われたばかりなので、何とか口にする。
サスケはそれを聞いてうなづく。
それにナルトは安心して、食事とシャワーを済ますべく、部屋から出て行く。

布団の中では、サスケがガッツポーズを作っていた。
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