小説


□Falling not noticed.
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 繋ぎ止めておきたい。


 そんな想いが、俺を、そして君を苦しめる。










Falling not noticed.











 大学に入って早三ヶ月。


 もう、どこに何があるか大体把握出来た。


“大学生”にも大分慣れた。


 互いに合わせた時間に学食で彼女と昼食を摂る。


 交際を始めてから、もう二年になる彼女。


 今では互いの事は知らない事の方が少ないし、以前は新鮮に感じられた他愛もない会話は平凡な日常と化していた。


「あ。公太ってば、また肘ついてる」


「んあ?」


 あぁ、本当だ。意識してはいるけれど、いつの間にかテーブルの上で肘をついている。


「直んないねぇ、その悪い癖」


 彼女は苦笑しながら味噌汁を啜った。俺もつられて苦笑する。


 彼女にいつも注意されるこの癖。どうしても直らない。


「就職するまでに直さなきゃね。私が直してあげる」


 などと意気込む彼女。


 お節介で世話好きなところは、時に優しく時に残酷だ。


 ──嘘つき。


 心中で呟く。


 就職まであと四年もある。癖はなかなか直らない。


 直るとしてもギリギリだろう。が、その時彼女は俺の傍にはいないだろう。


 君は嘘つきだ。


 俺が知らないとでも思っているのか?君の中に、別の男がいる事。


 見くびるなよ。二年の付き合いなんだ、それくらい気づくさ。


「ありがとう」


 本当の事を知っていても知らないフリを続ける。そうすれば君は離れて行かない。


 君は優しいから、二年も付き合った俺を簡単に見捨てられない。


「素直でよろしい。……ふふ、そんな公太が好きだよ」


 それは、君が君自身へ与える戒めの言葉。


 もう好きじゃないくせに。無理して俺に好きだと言って──君の自己防衛。
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