突貫!アバチュ部屋

□Re:Cleaning
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 最近、ヒートが小綺麗になった。

 まるで以前は小汚なかったかのような言い種だが、そこは事実なので置いておく。今は変わったのだ。異臭を放ち、怒り心頭のアルジラに本体ごとシャワールームに投げ込まれるまで着たおしていたマントはクリーニングにかけられ綻びも繕われた。それからも汚れたマントやスーツはこまめにリネンに出しているし、シャワーも毎日しっかりと浴びている。ざんばらに荒れ放題だった赤毛は相変わらず寝癖はそのままだが、根気よく続けた手入れにより毛艶良く柔らかな手触りになった。ふわふわと揺れる赤毛をセラに撫でられ、気持ち良さそうに目を細める様はまるで四つ足の獣みたいで微笑ましく思えたものだ。
 それらの何一つ、ヒート自身の手では行っていないので正確には変わったというより変えられたという方が正しいのだが。些細な事である。サーフは己の手腕に密かに満足していた。

「ヒート、今日も洗ってやるよ」
「おう」
 初めはえらく抵抗の意を示してきたものだが、今となってはおいでと手で招くだけで特に不平不満を漏らすこともなく素直についてくるようになった。サーフの手によってスーツやアンダーを脱がされることにも慣れたのだろう、されるがまま堂々とした佇まいである。
「それにしても毎日毎日、よくこれだけ汚せるな」
 血と雨が染み付いたマントをリネンに放り込み感心したように呟けば、うるせぇと拗ねた風に唇を尖らせる(ああ、可愛い仕種だとサーフはひっそり見入った)。
「いちいち汚れなんか気にして戦ってられるかよ」
「まぁ、そうだな。ヒートの戦い方だとそうなるか」
 エンブリオンが誇る随一のパワーアタッカーは最前線で派手に立ち回るのが得意の戦法だ。双頭の赤い悪魔が敵を切り裂き、派手に返り血を浴びながら肉片を喰い散らかす様は他勢力から見て十分畏怖の象徴と映っているだろう。
「これからも頼りにしているよ」
「へっ、当たり前だ」
 プロテクターを外し、逞しい肩を撫でながらアンダーの裾をたくし上げる。心得たようにヒートが両腕を上げたので、そのまますぽんと頭から抜き取った。健康的な素肌が目に入る。今日も傷ひとつ負わなかったNo.2の優秀な働きに、サーフは満足そうに頷いた。
 そのまま慣れた動きで下も脱がし(慣れたとは言え急所が外気に触れる時だけは僅かに身じろぐヒートが面白い)、神業的な早さでサーフ自らも着衣を取り払うと二人連れ立ってお馴染みのバスタブ付きのスペースへと向かった。

「………なぁー、サーフー……」
「ん?何だ?」
 バスタブの縁に腰掛けたヒートが間延びした声で呼ぶ。その前に膝をつき、足の指を一本一本丁寧に洗っていたサーフが視線を上げ応えた。
「お前、いつも俺にこんなことしてるけどよ……お前は誰かにしてもらってんのかよ」
 こんなこと、とは身体を洗ってもらうことだろうか。それとも――
「ヒートと一緒に洗ってるからな。これ以上シャワーにあたったら身体がふやけそうだ」
 わざととぼけたように言ってやれば案の定そうじゃなくて、とむずがるように足が揺らされる。洗いにくいのでたしなめるべく膝裏から太股にかけゆっくり撫で上げてやれば、ぎくりと震え大人しくなった。
「お前ボス、だろ……いいのかよ」
「ボスが部下の身体を洗ってはいけない、なんて掟はないよ」
 それでも未だ不満そうな表情のヒートを見つめ、ああそれとも、と出来るだけあどけなく聞いてみる。
「俺が他のやつらと“こうする”のは嫌か?」
「んなっ!?」
 突然下の急所を握られ、ヒートの全身が強張り見る間に肌が赤く染まる。当たりか、と股ぐらに伸ばした手を緩やかに動かし、サーフは再び満足そうに頷いた。
「妬いてくれたんだ。嬉しいね」
 そんなことする訳ないけどな、と思考にやや勢いのありすぎる男の不満を嬉しさと愛しさ半々で迎える。
「違ぇ、そんなんじゃねぇし!お前が俺以外のやつの前で膝折るのが気に入らねぇってだけで……!!」
「それを妬いてるって言うんだよ、ヒート」
「てめぇ、……ん、がぁ!!!!馬鹿、何やってんだよ!?」
 思わずバスタブの縁から滑り落ちそうになったヒートの腰に抱き付き、そのまま開いた両足の間に身体を捩じ込んで湿った赤い下生えへと鼻先を埋める。唇で急所の根元をまさぐり、ぶら下がった逸物に先端目掛けべろりと舌を這わせた。
「ひ、いィィ……っ!!!!」
 途端に膝から爪先が痙攣をおこしたように震えたのが振動で伝わる。ああ、なんて可愛い反応をするのだろうか。
「おいサーフっ、何、何を……」
「あんまりヒートが可愛いから、喰らいたくなった」
 股ぐらに埋まり、舌なめずりをしながらとんでもないことをうっとりと呟くボスを見て、ヒートは顔から血が引く音を聞いたという。

***

「嫌だ、やめろ!!そこ一番汚ねぇトコだろ!?何でくち入れんだよ、馬鹿か!!」
 最近すっかり大人しくなったかと思ったが、久し振りにNo.2から反抗的な態度を取られて何故か心が踊る。
「大丈夫いつもみたいに洗うだけだ。唾液には殺菌・消毒作用があるとか言うだろ。だから大丈夫」
 全然大丈夫じゃねぇ!と股間に喰らいつこうとするサーフの頭をぐいぐい押しやりながらヒートが吠える。
「やめろってば!!」
「痛っ、この……っ、いいから、大人しく……しろ!」
 往生際の悪い抵抗にサーフも余裕が無くなってきたのか、股関節を砕かんばかりの勢いでぐいと目の前の足を開きにかかる。
「い゛っ、てぇ!」
 太股を掴んだ際にうっかり爪が食い込んでしまったのか、ヒートが痛みに顔をしかめる。はっと我に返ったサーフがすぐ手を離すも、内腿部分には半円型の朱が数ヶ所散っていた。
「あ、すまないヒート」
 身体に流れる悪魔の力ですぐに塞がるような傷だ。けれどサーフは心底申し訳なさそうに謝罪すると、赤く腫れた箇所へとうやうやしく口付けた。
「別に、いい。つーか、くすぐってぇよ、馬鹿」
 さほど気にした様子もなく払おうとするヒートを押し止め、もう一度小さく音を立てて口付ける。薄く唇を開き散った朱色へと舌を這わせた。傷口から傷口、その周辺へ、徐々に徐々に、ねっとりと太股全体を舐め回す。熱い肌の味に少し興奮してきた。
「ヒート……は、ヒート……」
「……っ、さー、ふ」
 水滴にけぶる銀の髪が恍惚の表情を浮かべ行う奉仕に、知らぬ間にヒートも息が上がってくる。そうして力が抜けた所をサーフが見逃す筈もなく。
「……食べるね」
 ニヤリと笑い、狙った部位へと喰らいついた。  
「あっ!!うあ、やめ、喰うな、喰うなよ……んんンァ!!」
 急所を捕られたヒートがびくびくと震え声を上げる。いつも身体の『奥』を洗っている時に聞こえる、あのどうしようもなく甘い声だ。
「ん、ヒート、ヒート、ふ、う、んっ」
 喰らうと言っても歯は立てず、口の中で舌と唾液を絡ませこするようにひたすら味わう。男の、ヒートの、肉の味。美味い、と本能で感じた。
 固く芯を持ったそこを頬肉をすぼめ扱く。溢れた汁をじゅうと啜りながら上を見遣れば、今にも泣き出しそうな顔をしたヒートが必死にバスタブの縁で身体を支えていた。
「サーフ、やめろ、そこ、舌、舐めんなってぇ……っ」
「ん、気持ち悪いか?」
 あまりにも辛そうに訴えるので途中で一度口を離し聞いてみれば、見るからに残念そうな、物足りなさそうな顔をする。
「それとも痛かった?」
 切なげな様子に気付かないふりをして重ねて聞けば、やっとのていで弱々しく首を振り答えた。
「痛くはねぇ……けど、いつもよりおかしくなる。なんで、手でやらねぇんだよ。わざわざンなとこ……変だ、お前」
 おかしくなる。思考が飛ぶということは、それはやはり『良い』ということだろう。なら拒否することもないのに何故素直になれないのか――まぁそこがヒートの可愛いところでもあるんだよな、と悩むことなく自己完結する。
「俺はヒートのこと、全身どこまでもくまなく舐めたいと思ってるよ」
 サーフ本人はなんてことのないように言ったつもりだが目の前の男の表情は明らかに引いていた。だがもう構うこともないだろう。
「ヒート、食べさせて」
「…………っ」
 有無を言わさず再び急所に喰らいつく。今度は大して抵抗もなかった。
 中断されて少し柔らかくなっていたものを舌でねぶり、頬で扱き、上顎で揉み挟む。ヒートの身体はどこに触れても心地好い熱を持っているが、ここの肉は格別に熱い。
 けれど、サーフはもっと熱い場所を知っている。
「ん、んぐ、あ、ぐ、フゥッ、アア!」
 肉を啜る度にじゅくじゅくと体液が音を立てる。自分で止めたとは言え物足りなさを感じていたヒートは与えられる刺激にすっかり夢中になっている。獣じみた甘い声がサーフの耳に心地好く響いた。
「ほら、ヒート。出して」
 一言告げてから舌で容赦なく先端を刺激しきゅうと吸い上げる。
「ンァ、あ、ぁアアぁぁっ!!!!」
 一際高い声を上げ、促されるまま思いきりのけ反りながらヒートがサーフの口の中へと吐き出す。
 想像通り、ヒートのは目眩がするほど美味しかった。

「…………っんく、あー……やばいな、これ。クセになりそう……」
 ちろちろと先から溢れ出るものまで卑しく舐めとってからようやく顔を上げると、半ば放心状態のヒートと目が合った。唇は半開きでそこからひゅうひゅうと細い呼吸を繰り返し、太股や爪先が痙攣している。目尻はシャワーの水滴ではないもので濡れて赤くなっていた。
 本当にクセになりそうだなとその光景を眺めていると、とろりと熔けた鉄のように赤い眼が向けられ、さーふ、と舌足らずに名前を呼んだ。
「サーフ、……サーフ」
「何だ、ヒート?」
 うやうやしく手を取り聞いてやれば、熔けた赤が熱を持ってサーフを見つめる。
「なぁ、今の……もう一回」
 未だ少し痙攣の残る足が左右から絡み付く。ああもう。素直になった彼はこんなにも可愛い。
「勿論。そのあとちゃんと、『奥』も綺麗に洗ってやるからな」
 絡み付いた足を愛おしげに撫で、すっかり傷の消えた内腿にまたひとつ口付けをした。

 もうしばらく、シャワールームは貸し切らせてもらおう。
 
 
END.


*そしてシャワールームから出た途端、光のない参謀の瞳がサーフを襲う……!

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