小噺

□波乱万丈夏祭りB
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「お前ら何やってんだ…っつーか、何しに来たんだ」
屋台から連なる弾き飛ばされた人々の亡骸を前に、荒垣は盛大な渋面を作り、見た目だけはこの上なく整っている三人へと問い掛けた
「夏祭りに来たのだから祭りを楽しむに決まっている」
「真夏の夜のアバンチュールであります」
「シンジ、ここで働いているなんて知らなかったぞ!教えてくれれば真っ直ぐ飛んで来たのに!」
「いっぺんに喋んな!!俺は聖徳太子じゃねぇんだよ!っつーか、もう既に真っ直ぐ飛んで来てんじゃねぇか!」
聞き取れないと言いつつ、真田の言葉にだけはしっかり返事をしている荒垣
「お前こそ、こんな所で何をしているんだ?」
桐条が訝しむ様に尋ねれば、荒垣が屋台を指差し答えた
「見て分かんだろ…バイトだバイト。知り合いに頼まれたんだよ」
「荒垣さんのお知り合いですか。知っているであります。こういう地方の祭り屋台は、大体頬に傷があったり背中に桜吹雪が彫られている人が経営しているでありますよね」
「違ぇよ!お前は何でそんな偏った知識しか持ってねぇんだ!!」
アイギスの発言に慌てて否定をする荒垣だったが、桐条の顔はますます怪訝に歪められた
「荒垣…お前…」
「だから誤解だっつってんだろ!」
「シンジ、とりあえず焼きそばをくれ。五人前」
「この流れでそうくるか!?しかも食い過ぎだこの食欲馬鹿!」
とことんマイペースな三人に翻弄され、荒垣は苛立ちのあまり近くにあった真田の頭を殴った(しかしダメージ0)


「――美味い!さすがシンジの焼いた焼きそばだな!」
プラスチックのトレーに大盛りで盛られた焼きそばを、見た目の上品さからは想像もつかない程の勢いで頬張る真田
その隣では桐条が、こちらは見た目通りの優雅な仕草で一口ずつ食していた
「ああ、庶民の味というのもなかなか悪くないな…」
「私も摂取してみたいのですが…メロンソーダで我慢であります」
焼きそばが固形物であると知ったアイギスは、残念そうな顔で夏祭り特有の炭酸飲料を飲んでいる
「…気に入ってもらえて結構なこったがな…お前ら他所いって食え!他の客に迷惑だろうが!!」
屋台の真ん前を陣取ったまま黙々と食事を続ける三人に、荒垣は再び渋面を浮かべ怒鳴りつけた
「歩きながら物を食べるなど、はしたない真似が出来るか」
「液体物を摂取している時に激しい振動を与えると、精密機関が漏電する恐れがあります」
「他の客って、誰も寄り付いてないじゃないか」
「だからいっぺんに喋んなっつーの!誰の所為で寄り付かねぇと思ってんだ!!」
あくまで真田の言葉にだけは反応しつつ(ついでに拳骨もくれて)、荒垣は三人を追い払う様にしっしっ、と手を振った
「おら、とっとと他の所行って来い。あと一時間もしたら花火が始まって、もっと人増えんぞ」
「ハナビ…?それは一体何でありますか?」
「ほら、お前がいつも指先から出すやつだろう」
「そりゃ火花だ!おい、桐条。このバカ二人何とかしてくれ!」
「アイギス、君が狙撃時に指から出る物と、今から空に上がる花火という物はまた別物でな…」
「バカばっかりかこいつらー!?」
天然ボケ倒しの三重苦にかなりの苦戦を強いられる荒垣(唯一のツッコミ)だった
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