小噺

□波乱万丈夏祭りA
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――「私たちと共に祭りへ行くか、この場で血祭りとなるか、どちらか選べ」――

これからロードワークに行くと言っていた真田さんに向かって、美鶴さんが浴衣姿でマンゴーシュを突き付けながらそう同行を申し出ていました

その後二つ返事で来て下さった真田さんも交えて、私たちは今、長鳴神社の夏祭りに来ているであります
ここで一体、どのような“真夏の夜のアバンチュール”が待ち受けているのか…
大変ワクワクであります!


「…それにしても凄い量の人であります。順平さんの様な平均的な方だと、あっという間に紛れてしまいそうな程であります」
「あぁ、確かに髭と帽子が山程いるな」
「タラッタと呼べば分かるんじゃないか?」(←間違い)

――(伊:…あれ、何だろ?何か急に悲しい寒気が…)

美鶴さんが黒服にサングラスをかけた男性たちを呼び出して用意させた浴衣に身を包み、真田さんも興味深げに辺りを見回しています

コロマルさんからアドバイスを頂いた通り、真田さんを連れての夏祭り…
「アバンチュールの中で面白い事が腐る程起こるだろう」とコロマルさんは言っていました

私のメモリに記載されている『夏祭り』といえば、屋台、カツアゲ、境内裏の茂みの中、のみであります(天月さんにそれを言ったところ、大変良い笑顔を浮かべて“真夏の〜”という言葉を教えてくれたであります)
今回は社会勉強の一環として、実際にそれがどのようなものなのかを検証していきたいと思うであります

「まずは屋台であります!」
びし、とセンサーが適当に選んだ店を指差し、お二人に着いてきて頂く様要請しました
「アイギス、楽しそうだな」
そう言って笑った真田さんに釣られて、美鶴さんも笑って同意されていました
………
美鶴さん、とても嬉しそうであります
表面には現れていませんが、サーモグラフや高周波から確かに気分の高揚が感じ取れます

よくは分かりませんが、祭りよりも真田さんと一緒に居ることが嬉しいのでしょうか?
お二人は天月さん達が入る以前からSEESとして共に行動していたので、互いに気心もよく知れているのかもしれません

…ですが今は屋台です!屋台が先決であります!

「障害が多々あるであります。エンジン全開、薙ぎ倒して進むであります!お二人とも、しっかり掴まっていて下さい!」
「え?」
「何?」
がしりとお二人の体に腕を回し、前傾姿勢をとります
この“浴衣”という衣装は走るのにはやや不向きですが、歩幅の制限はスピードで挽回するであります
「オーバー、130kmであります!」
「なっ…!?」
「アイギス!?」

風を切るように通行人を薙ぎ倒して走る中、お二人の悲鳴のような物が聞こえた気がするでありますが、きっと気のせいであります
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