小噺

□波乱万丈夏祭り@
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「今日は夏祭りなんだよ」

“ユカタ”という民族衣装に身を包んだ風花さんが、同じ様な恰好をしたゆかりさんと、天月さん、そして順平さんたちと一緒に寮を出る際、こう言っていました

「夏祭り…聞いたことがあります。男と女が地域団体提供の催し物にかこつけ、“真夏の夜のアバンチュール”を楽しむ行事…ですね」
「あんた、アイギスに何吹き込んでんのよ!!」
直ぐ様、ゆかりさんの張り手が順平さんに叩きこまれました
「何の疑いもなく俺の所為!?」
順平さん、ダウン
ゆかりさん、お見事であります
「まぁ、当たらずとも遠からず…って感じかな」
「ち、違うと思うけど…」
天月さんの言葉に風花さんが控え目に返しています
…そもそもこれは天月さんから聞いた話なのですが…言わない方が良さそうでありますね

「じゃあアイギス、お土産買ってくるから留守番よろしくね」
「了解です。行ってらっしゃいであります」

玄関から皆さんを送り出した後、部屋に戻ろうとした私にコロマルさんが声を掛けてきました
「ワンッ」
「コロマルさん、残念ですが今日の散歩はお休みであります。私と一緒にお留守番していましょう」
「ワウワウ」
「?…違うでありますか?何々…私は夏祭りに行かないのか、でありますか?」
「ワン」
「私に“真夏の夜のアバンチュール”は必要ないであります」
「ワッフン…」
「年頃の娘がそれではいけない?……コロマルさん、私は対シャドウ兵器であります。心はありますが、十代の人間の女性ではありません」
「ワウ!」
「え?そんなもの知ったことじゃない?兵器だろうが何だろうが、せっかくなんだから社会勉強がてら楽しんで来い…と?」
「ワン」
「社会勉強…確かに、勉強は大事であります」
「ワンワン、ワウンワンッ」
「その勉強ではない?勉強と言っても色々あるのですか?……ふむふむ……お〜、なるほどなー……コロマルさんは大人でありますね……分かりました!では早速、美鶴さんにお願いしてくるであります!」
「ワン!」

留守番は任せろ、と言ってくれたコロマルさんにお礼を言って、直ぐ様三階にある美鶴さんの部屋へと向かいました

(コンコン)
「美鶴さん、美鶴さん。アイギスであります。お願いがあるであります」
ノックをしてから呼びかけると、暫くしてから美鶴さんの声が返ってきました
「アイギス?どうした急に…待ってろ、今着替えているから…」
「申し訳ありませんが、急いでいるので失礼するであります!」(バキョッ!)
「うわぁっ!?こ、こらっアイギス!待てと言っただろ!」
丁度シャツを着替えていた美鶴さんが、真っ赤になって怒っています
急な用事とはいえ、やはりノブを壊すのはいけなかったでしょうか?
「後で溶接修理を行います。それより美鶴さん、お願いが…」
「まずドアを閉めろ!!」
「…了解です」



「――夏祭りに行きたい?」
「はい。社会勉強の一環として、私も“真夏の夜のアバンチュール”というものをしてみたいであります」
「真夏の…アバン…?」
やはり、美鶴さんにも良く分からない言葉なのでしょうか
首を捻っているであります
「しかし…祭り、か…」
「…駄目でありますか?」
美鶴さんがあまり気乗りしている様に見えないであります…
「…いや、構わないさ。アイギスがそうやって自分の望みを言ってくるのは珍しいからな…よし、一緒に行こう」
ふっ、と笑ってから外出を許可してくれた美鶴さん
「ありがとうございます!」
なるほどなー…これが順平さん曰く、『女帝のカリスマ』というものなのですね

「…あ、肝心な事を言い忘れたであります」
「ん?」
すでに部屋から出ようとしている美鶴さんを呼び止めて、一番伝えなければいけない事を伝えました
これがなければ“真夏の夜のアバンチュール”は出来ない、とコロマルさんも言っていたであります

「夏祭りへ行く際は、真田さんのご同行も要請するであります」
「……明彦も?」


私服のままドアノブを握っていた美鶴さんが、くるりと向きを変えて「…せっかくだから浴衣に着替えて行こう」と言い出したのはそのすぐ後であります――



「……あ!何か今めっちゃ面白い事が起こりそうな予感がした!リーダーの第六感!?順平、たこ焼きもう一皿買って来て!」
「それとこれとどう関係あんだよ!っつーか自分で買えよ!」
「歯に青のり付けながら何言ってんのリーダー…」


―― 波乱の夏祭り、開幕(?)


To be countinued…


*二年組は皆仲良し
コロマルとアイギスは良い攻コンビだと思います

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