小噺
□血の味
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真田明彦という男に対して荒垣が感じる印象は、まず第一に『危なっかしい』だった
例えるなら、絶妙なバランスで成り立つ積み木のような――いつ倒れるか分からない、そういった目の離せない類いの危うさだ
鋼のように真っ直ぐと伸ばされた背筋も、孤児院での過去を知る荒垣から見れば酷く脆いものに見えて仕方がない
誰かが傍に付いて支えにならなければいけないと思った
そして、初めて会った十年前から今現在まで、その“誰か”は荒垣の役目だった
…否、役目などではなく――存在意義そのものだったのだ