小噺・弐

□大人明彦物語A
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――むしろ何かが憑いているとしか思えない程、くだらない騒ぎばかりが起きる巌戸台分寮内

リーダー天月の(よくない)頑張りと、自らの天性からなるそそうにより10年後の大人の姿になってしまった真田明彦(只今の外見年齢28歳)

もとよりすらりとした体型であったが、10年という肉体時間を経過した今その体つきはよりシャープな物となり、どことなく哀愁感も漂う出で立ちである
多少予定とは違うも、事が上手く運んだことに天月はセクシーダンスを踊る勢いで喜びを露にしていた(しかし誰も魅了されていない←カリスマなのに)

「ヒーホー!真田先輩セクシャルだホー!!すんげぇマジパねぇ何だこの美のゴッド!セクシャル!Yesセクシャル!とりあえず手始めに脱いでもらっていいですかブフォッッ!!!!」
フロスト語でセクハラ発言をしまくる天月に荒垣が勢い良く制裁ビンタを叩き込み、その流れのまま呆けた顔をしている真田の肩をガシリと掴む
「この馬鹿野郎!お前何度言やぁ分かるんだ!?誰のか分からない物を勝手に飲むな!食うな!その結果がこのザマだぞ!?もう本当…お前もう…もう!!」
「荒垣サン!叱り言葉がおかん口調になってるっすよ!」
「何だシンジ…これお前のだったのか?それは悪かったな」
「いや違うけどよ…もうそういう問題じゃねぇだろうが!っつーかお前、気付いてねぇのか!?」
「…何に?」
「はいはい!俺が説明します!」
さっぱり事態が飲み込めていない、といった様子の真田に背後から天月がつつつと近寄り、目にも止まらぬ早業でバッ!とベストとシャツを剥ぎ取った
「!?」
荒垣がギョッと目を見開く横で、上半身が見える様に真田に手鏡を向ける天月
ボクサー特有の極限にまで絞られた身体はそのままに、白い肌につんと存在するセピア色の突起は成長と共に艷めかしさを増している
「ほら今の先輩こんな感じ!ヒュ〜!ワンダフォー!」
「……おぉ」
「おぉ、じゃねぇよ!脱がす必要が何処にあるんだ!!」
底の硬いブーツから繰り出されるかかと落としを天月の脳天に綺麗に決めた荒垣が、あわあわと狼狽えている伊織に「見るんじゃねぇ」とばかりにギロリと睨みを効かせる
「ヒィイィィ!みみ、見てないっす!俺ッチ何も見てないっすーー!!」
山婆の包丁磨ぎを目撃した村人の如く、両目を手で覆い脅えきった様子の伊織(全く関係無いのに一番可哀想)
「シンジ、何だか今日の俺はいつもより老けてないか?」
「お前はまだ分かんねぇのか!?もういい面倒臭ぇ話は部屋戻ってすんぞ!とりあえず乳を仕舞え!テメェも写メ撮ってねぇでとっとと解毒剤持って来いやぁ!!」
バキューン、バキューンとシャッター音を立てる携帯ごと天月を窓から放り投げ、半裸状態の(大人)真田を引き摺りながら荒垣は二階の自室へと戻って行った
ラウンジには伊織が一人、ポツンと取り残されている…

「ただいまー!あ〜、やっぱ買い物はいいわ〜♪ついつい買い過ぎちゃった…って、あれ…何、どうしたの順平?」
両手に紙袋を二つ三つと下げ、晴れ晴れした表情で寮の玄関をくぐって来た岳羽が、ラウンジのソファーで沈んでいる伊織に気付き声を掛けた
びくりと肩を震わせ、ゆっくりと振り返った伊織の顔面のありとあらゆる穴から、ダバーッ、と液体が流れ出る
「う…うわああぁぁん!もうヤダゆかりッチ、俺体力の限界!辞める!ツッコミ辞めるーー!!」
「はぁ!?何いきなり訳の分かんない引退宣言してんの…ぅわ…汚なっ!ちょっと順平汚い!鼻水垂らしながら来ないで!汚い!!っていうか汚い!!」
「汚い汚い連呼すんなぁぁあ!!」
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