裏物部屋

□苦党
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アイスキャンデーを舐めるようなものだと思った



ぺちょり、と湿った音を立てて、唾液を含んだ舌と唇を這わせる

やり方なんて知らない
ただ何となく、自分がされて気持ち良いと思うような事をしていくだけだ
要は手の代わりに舌を使うだけなのだから、それに似た動きをすればいい

…あぁ、だけど舌先だけじゃとても、この大きさのものを一度に舐めきれないな

それなら、こうすればいいか

はむ、と口一杯に頬張った物が、一瞬ぶるりと痙攣したような気がした

熱い
それに何だか変な味だ
苦いような、渋いような
アイスキャンデーとは程遠い物
だけど形は似ているから、そのまま普段通り食べる時みたいに(歯を立てないようにだけ気を付けて)すすり舐めればいい
ちゅむちゅむと音を出しながら吸い上げる度に、尖端からじわじわと苦い汁が滲み出て来る

あぁ、興奮しているのか

何だか妙に嬉しくなって、視線だけそっと上に向ける
………
凄い顔だな
耳まで真っ赤で、眉間は皺だらけで、口元は真一文字に結んでいる
怒っているのか耐えているのか、それとも悦んでいるのかさっぱり分からない
だけど口の中には、じくじくと苦い汁がどんどん流れ込んでくるから
全く何ともない、という訳では無いだろう
普段飲んでいるプロテインや健康青汁とは、また違う苦味
変な感じだけど、不思議と嫌じゃない

むしろ――もっと
もっと欲しい、と思ってしまう

「んン…む……ふゥ…ん…」
じゅぅじゅぅと、搾り取るように口をすぼめてしゃぶりつく
口では息が出来ないから、自然と鼻からの呼吸になる
ふうっ、と洩れる鼻息が、目の前にある縮れた毛を揺らした
それが何だかおかしくって、思わず目元が緩む

「あ…アぁ……っく…」
くしゃくしゃと半ば夢中で頭を撫でて来ながら、名前を呼ぼうとしてくれたのか
だけどその前に強く吸い付いたから、タイミングを逃してしまったのかもしれない
堪えるような吐息だけが図上に降ってきた
…我慢しなくてもいいのに
ちろちろと亀頭をつつく様に舐めれば、更に熱い吐息が洩れる

我慢するのは好きじゃない
『自分がされて嫌な事は、人にするものではありません』
道徳の教科書にもそう書いてある
だから変に焦らす事はしない
こうされると直ぐに達する、という動きを舌で、指で、必死に伝える
揉みしだくように舌と腔壁で挟み上げれば、もう限界なんだろう
両脚が強ばり、びん、と張り詰めた物が火傷しそうな位熱くなった
「もう、いい…離れろ…っ!」
くしゃりと髪を掴まれて、顔を離されそうになる
おい、何をするんだ
あともうちょっとなんだろう
きっ、と睨んで牽制し、離すものかと両手で包み込む
最後の仕上げに根元から思いきり扱き、ちゅうぅ、と吸い上げれば――次の瞬間、口の中に何とも言えない苦味が爆発した

「――…っ!!」

こふっ、と予想以上の量にむせれば、直ぐ様顔を引き剥がされて口元にティッシュが宛てられる
「吐き出せ!」
強い命令形の口調
…嫌いじゃないけど、それは聞けない
うっとりとした表情で、口から溢れた分も含めてゆっくり嚥下する
ゆっくり ゆっくり

…ああ、苦い

その様子を唖然とした顔で見詰めてくる
まるで鳩が豆鉄砲を食らったみたいだな
「馬鹿…テメ…腹壊したらどうすんだよ!」
「そうなったら、お前が看ればいい」

――責任をとって

にこりと笑って言ってやれば、酷く傷付いた表情を見せる
なんだ、その顔は
ここは喜ぶ所じゃないか
「足りないんだ。――まだ、足りない」
甘える様に何も纏っていない全身を擦り寄せれば、嗚咽混じりに強く掻き抱かれた

甘い物は好きだ
辛い物も好きだ
…だけど一番好きなのは

「――苦い物が、もっと欲しい」


End.


*目覚めたら、枕元にこの話の前半辺りまで打たれた携帯が転がっていて、爽やかな朝の空の下、窓から飛び降りたくなった11階のとある一室(確実に召される)

でも後半はノリノリで打ってましたよね
ヤンデレサナダは凄まじい破壊力をお持ちの様です

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