手に取ったのは……『皇帝』のカード

「………まぁ、普通だな」
どことなく不満気に呟く荒垣に、天月はにじり寄りながら囁く
「何ですか?死神の方が良かったですか?荒垣先輩結構ドMですね〜…フガッ!」
裏拳を叩き込まれ沈黙した天月を余所に、荒垣は太陽カードを引けなかった事を悔やんでいた
「はぁ…コロちゃん…」
残念そうに呟く荒垣に、片手に骨付き肉を持った真田が話しかける
「シンジ、元気がないぞ。お前の誕生日なんだからお前が楽しまないでどうする」
「あ?…あぁ、そうだな。…つーかお前、そのマンガみてぇな肉は何だ」
もりもりとそれこそ漫画のようにマンガ肉を頬張る真田に呆れ、まぁせっかく桐条が用意してくれたのだからと、荒垣が気を取り直してグラス(中身はジュース)を傾けた時――

「ところで、やらないのか?」

ブーーーッと噴き出し、真田の発言に目を見開いた
「はぁ!?やる!?…やるって、何をだよ!」
「何って……ナ」
「馬鹿野郎っ!!」
ガツン!とトングの柄で頭を殴る
痛い、と全然痛くない様子で頭をさする真田に荒垣は辟易した
「お前な…そういうのは言うにしても時と場所とタイミングっつーのがあるだろ」
「何だやっぱりやるのか」
「話聞け」
ギリギリとトングで頬をつねり、涙目になるまで手を止めずにいた
「とりあえず今はメシ食うぞ。食って……その後だ」
「分かった!」
つねられてすっかり赤くなった頬をさすりつつ、本当に分かってんのかこいつと言いたくなる様な笑顔で真田が答えた


――ひとしきり騒ぎ終え、それぞれが自室へと引き上げた後のラウンジ

誰も居ない空間に、ソファーの上でゴソゴソと人が動く気配だけがあった

「…何がやらないのか、だ。学校行ってねぇ奴が夏休みの宿題もクソもねぇだろ。つーか今やる意味が分からねぇ。嫌がらせとしか思えねぇ」
不満タラタラ、といった様子の荒垣が、ソファーで寝そべりながら問題集を解いている真田を睨みつける
「やはり見ている奴がいないと思う様にはかどらなくてな。かといって美鶴に頼むとスパルタすぎて…まぁそれが悪いかといえばそうでもなく…」
「うるせぇよ」
げし、と膝の上に乗っている脚を蹴り上げる
「あ、字がずれたじゃないか」
「なら人の座ってる上にデーンと乗っかってくんじゃねぇ」
むぅ、と睨んでくる幼なじみを更に睨み返し、ついでに足の裏をくすぐってやった
「ひゃっ!?止めろシンジくすぐったい!」
途端にバタバタと脚を動かす真田を押さえつけ、足の裏から腿にかけて手を動かす
「ちょっ、本当に止めてくれ…!ふっ、はは…!」
くすくすと震える様に笑い、仕舞いにはけらけらと大声で笑い出した真田が、仕返しとばかりに起き上がって荒垣の脇腹に抱き付く

二人掛けのソファーの上で、只々くすぐり合うだけ

十にも満たない子供同士の様なやり取りに、それでも酷く満ち足りた気分になった――


《ほのぼのハッピーエンド》――皇帝End.


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