□HONEY TEA
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都心から郊外を抜け、さらに進むと、およそ現代日本とは思えないほどの広大な森が広がっている。
森は全て私有地で、持ち主は関係者は口を揃えて変わり者という齢76のおじいさん。その森の真ん中には主の住むこれもまた現代日本とは思えないような、まるで19世紀のヨーロッパを思わせる巨大な屋敷が悠然と構えているが、現在主は不在である。
変わり者のじいさんは「ベガスが俺を呼んでいる」なる置き手紙を残し、使用人とボディーガードを数人だけ連れ、唐突に一年間のベガス旅行ヘ行っていた。

その人は名を斉藤和正といい、日本屈指の財力と権力を誇る斉藤グループの創設者であり、現会長でもある。斉藤グループは、玩具からテーマパークまで子供に関することならなんでもやる。


ここのところ主不在の屋敷では、世話をする人間のいない使用人達が暇を持て余していた。もちろん掃除や食事の準備などやることは多いのだが、直接世話する人間がいなければ何か物足りない。それが普段何人分にも手のかかる斉藤の世話をしている者達であるからなおさらなのだった。

そんな淀んだ雰囲気の屋敷の一室で、執事長のところに一本の電話が入る−。
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