鋼の錬金術師/Y 20210223
□もしも願いが叶うなら、
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ふと、今でも思う事がある。
俺が下した『選択』は、果たして本当に正しかったのだろうか、と。
『扉』の向こう───俺が生まれ育った『本当の世界』から持ち出した『爆弾』を探す為だけに、錬金術が使えぬ『この世界』に戻って来たけれど。
だけど、結局は見つけられなかった。
いや、違う。
間に合わなかったんだ。
その為に遠い島国に二発も落とされ、沢山の命が一瞬で失った。
だから。
『俺は、人並みの幸せなど手にする価値も資格もない』――――と。
これからの人生を、そう生きようと誓ったというのに。
「初めまして。私の名は────」
漆黒の髪。
切れ長の、黒き瞳。
何度も耳にした、心地よい声音。
そう。
何と俺は、遂に『こちら側』の『彼』と出逢ってしまったのだ。
しかも、同性同名。
──何という、皮肉だろう。
よりによって、彼もまた『科学者』だったなんて。
俺が助手をしていた教授が緊急入院してしまい、その代理として現れた『彼』は、本当に彼と同じだった。
あの大佐本人と、錯覚してしまう位に。
しかも『彼』も戦争経験者で、地位は皮肉にも『大佐』だったのだ。
絶望でしかなかった。
『大佐』であって、大佐ではない『彼』を前にして、俺はどんな表情(カオ)をすればいい?
、