鋼の錬金術師/X
□誕生
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遅延最終汽車から、勢い良く飛び出す、二つの人影。
だが、只今の時刻は深夜12時ちょうど。
「だあ゛あ゛!間に合わなかったああ〜〜〜〜〜!!!!」
たった今、6月2日になってしまった瞬間、エドワードは路上で雄叫びを上げた。
「もぉ兄さん、近所迷惑でしょ!」
突然の兄の奇声を注意するアルフォンスは呆れ顔だ。
だが兄のエドワードは、道の真ん中にしゃがみ込み、何やらぶつぶつ呟いている。
「…だってさ。長年の俺達の悲願がやっと達成したんだぜ?初お披露目である今年は、盛大に盛り上げてやりたかったのに。それなのに、その日にちすら、間に合わなかったんだ、汽車が遅れたせいでっ!」
流石のアルフォンスも、その言葉に黙り込んでしまった。
―――そう。
兄弟の長年の悲願が達成したものの、アルフォンスの体調がすこぶる悪かった上、エドワード自身もまた、歩行器無しでは歩けなかった程、兄弟は衰弱していたのだ。
そのため、司令部には『取り戻した』という電話連絡のみで、まだ一度も『この姿』でロイ達に会っていなかった。
「………とりあえず、今は宿で休もう?遅れちゃった以上、1日遅れも2日遅れも同じ。だったら、一生記憶に残るような、素敵なパーティーにしようよ。ね?」
「………………そうだな」
こうして二人は、宿へと目指した。