鋼の錬金術師/X

君に言えなかったことがある5題/最終章『好き〜君が好きだということ〜』
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君が旅立ってから


どの位の時間(とき)が経過したのだろう



ついさっき、旅立ってばかりだというのに



電話が鳴る度に



扉が開く度に


君じゃないかと思ってしまう



寂しくて寂しくて



金色(こんじき)の髪を見る度に



君の存在を切に求めてしまう自分は



―――もう 己の感情を認めざるを得ない…





〜最終章 『好き〜君が好きだということ〜』





それは彼等が旅立ってから、数時間後の事だった。



彼等が乗った汽車がハイジャックされたという情報が入り、私は焦りの余り勢い良く立ち上がった。



だが私が立ち上がった瞬間、また直ぐに電話が鳴り、ハイジャック犯は直ぐに確保されたという。


当然、犯人を確保したのは彼等だ。



だが、確保した方法というのが、…余りにも、彼の性格を考えたら有り得ないようなやり方だったのだ。



何時もの彼だったら、誰彼構わず暴れ出し、小さな事も大事になるのが『当たり前』だった。

それなのに………犯人の同情心を乞い、それを逆手に取って確保するなんて。



しかも彼等がトラブルに巻き込まれる度に、毎回同じような手口で犯人を確保しているのだ。


有り得ない。


あの『彼』が、暴れず壊さず犯人を確保するなんて。





――――そんなある日。


旅先から戻った彼は、執務室にひょっこり顔を出した。



数々の報告を『上』から受けていた私は、思わず呟いてしまった。




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