ドラマ/妖怪人間ベム
□未来への約束
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この『言い伝え』は、俺が生まれる、ずっとずっと遥か昔の話。
俺のご先祖様は、山奥の小さな村に住んでいた。
まあ現代は多少民家は増えたものの、都内と比べるとまだまだ自然が多いこの地区に、他県にはない神社がある。
普通、神社と言えば『神様』が祀られているのが当たり前だが、この神社は違う。
『鬼』が祀られているのだ。
何でも、村にとって唯一の水源である川に巨大な落石で塞がれてしまい、酷い干ばつに見舞われてしまった。
そんな村の飢饉を救ったのは……三体の異形の者。
何と、人間の力では決してびくともしない筈の巨大な石を持ち上げ、しかも、流行り病に効くという薬草まで生やしてくれたという。
それは後に、同じ病に苦しむ隣村に薬草を届けた事により、この村はどんどんと発展していったのだ。
―――そして現代。
婚約者である菜穂ちゃんを両親に紹介する為、俺達は実家に帰省した。
両親はとても菜穂ちゃんを気に入ってくれた。
そこで俺が母親から初めて聞いたのは、俺が生まれるちょっと前に交流したという、不思議な『家族』の話だった。
物腰が柔らかな長い銀髪の青年と、竹を割ったようにサバサバした姉御肌の女性。
くりっとしたおメメと、礼儀正しいやんちゃな男の子。
元々社交的だった両親は、この三人と直ぐに親しくなった。
そんな、ある日。
突然産気づいた母親に気付いた父親は、急遽医師とお産婆を呼んだ。
だが、連日の雨で地盤が緩んでいたため、隣町を繋ぐ唯一の道が落石により寸断。
すると銀髪の青年は、こう言ったという。
『ならば自分達が、お医者様とお産婆さんを連れて来ます』…と。