鋼の錬金術師/Y 20210223

□もしも願いが叶うなら、
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「・・・・あんたは、パラレルワールドってヤツを信じるか?」



震えた声音を精一杯振り絞り、俺は言った。


「・・・私は科学者だが、そういうのは存在してると思うよ。確証はないがね、」



そう言いながら悲しげに笑う『彼』に、俺は霞む瞳で見つめながら言った。


「あんたの視た『夢』は、この世界とは違う世界に存在している、あんた自身の記憶だ、」


「・・・・・どういう意味かね?あの夢は『夢』などではないという事かね?」


俺は頷き、ポケットから有るものを取り出した。

そして小首を傾げた『彼』に握りしめていた右手を差し出しそっと掌を広ければ、一瞬で『彼』の顔色が変わった。


「!?」

それもそうだろう。

只の『夢』だと思っていたであろう銀時計が、こうやって目の前に突き付けられたのだから。


「な、」


言葉を完全に失い、視線が俺の顔と銀時計を行ったり来たりする『彼』に、俺は言った。


「俺、実はこの世界の人間じゃないんだ。あんたが言った『不思議な力』は、錬金術。その世界こそが、俺の本当の世界」


「・・・・・・」




───無言の時間が、流れた。


黄昏時の研究室に、漆黒の闇が迫りつつあるこの空間に、『彼』は、思わぬ言葉を口にした。


それは。


「・・・・・やっぱり君は・・・その世界の『私』と重ね見ていたんだね・・」


震えた声音でそう呟かれ、俺ははっと我に返って俯いたままの『彼』を無言で見つめた。



「・・・・・・・・・・・・ごめん」


薄暗い空間は、何処か夢うつつで。

夢か現実か判断出来ぬ雰囲気の中で、俺は、勢い良く『彼』に抱きしめられていた。



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