鋼の錬金術師/Y 20210223
□もしも願いが叶うなら、
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そんな、ある日。
研究器材を洗浄していると、不意に『彼』に話し掛けられた。
「君に訊きたい事があるんだが、」
「・・・何でしょう?」
だが直ぐには答えず、『彼』は俺を何処か寂しげに見つめて。
ふわりと、微笑む。
「君は、私を通して誰を見ているんだい?」
「────!」
見透かされていた。
思わず言葉を失う俺に、『彼』は肩を竦めて笑う。
「私が気付かないとでも思っていたのかね?」
何も答えられない俺に、『彼』は更に追い討ちを掛けるように言い放つ。
「初めて会った時もそうだった。私が戦争経験者で地位が『大佐』と知った時、君はえらく動揺していた。何故かね?」
「・・・・・・・」
「それだけじゃない。君が口にした『大佐』という言葉は、私に対して向けられたモノじゃない印象を受けた。私以外に『大佐』の知り合いでも居るのかね?」
下に俯き、思わず唇を噛み締める俺の頬に『彼』の右手が不意に伸びて。
優しく、触れた。
思わぬ事態に硬直した俺に、『彼』は言った。
「・・・・実はね。君と出逢ってから、不思議な『夢』を頻繁に視ていたんだ。夢の中の私は『私』と同じ軍人で、地位は────」
大佐、だったんだよ。
その言葉に、俺は勢い良く顔を上げ『彼』の顔を食い入るように見つめてしまった。
『彼』は、俺の長い前髪を優しく掻き上げるように撫でた。
「その世界の私はね、不思議な力を持っていた。こうやって、」
そう言いながら『彼』は、彼と同じように右手を差し出し、指を弾いた。
「こうやって指を弾くと、何もない空間から『焔』が生まれるんだ。・・・不思議な夢だろう?」
視界が、思わず歪んだ。
例え世界が違っても、やはり『彼』は彼だったのだ。
「その夢の世界では、君に良く似た幼い男の子と、大きな鎧が居てね。見た事の無い動物が刻まれた銀色の懐中時計を持ってた」
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