鋼の錬金術師/Y 20210223

□七夕〜切なる願い〜
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そんな私に、アルフォンスは言った。



「大佐は、あまり見ない方が良いですよ、」

「何故かね?」

「・・・・素人が読んだら、ただの『悪口』としか思えないような書き方をしてたので」


彼らしいな、と思って、私はアルフォンスの肩を軽く叩くと言った。


「それでも構わんよ」


私はアルフォンスの手を借り、笹を傾けて貰った。


そして、天辺に結び付けてあった短冊とは思えないほどの大きさを誇る紙を、そっと手繰り寄せる。


そんな私が目にしたのは、確かに悪口のオンパレードだった。




大佐ってさ
いい加減悟れよって思うよ
さっきからずっと
イヤミばっかりだし
着いたら小言ばかり
もう、どうかしてくれよ無能の癖に
あの顔見てると、腹立つよ
理不尽ばっかり命令するし
ガミガミうるさいし
とにかく、鬱陶しい
うるさい、黙れって言いたくなる




辛辣な言葉ばかりが並んでいて、私は本気で泣きたくなった。


でも、それでも。


「・・・・・アルフォンス」

「はい?」


私は霞んだ瞳で笑いながら言った。


「それでも私は、君達の幸せを願わずには居られないんだ」


「・・・・・・・・」

私はふと、もう1枚結んであった短冊に気付き、そっと手繰り寄せた。

その短冊は表と裏のある紙で、何故か凸凹して書きづらいハズの裏側に書かれていた言葉に絶句してしまった。

それは。


『大佐、嫌いだ。大嫌いだ!』・・・と。



ーーーーショックだった。



肩を落とし、俯く私にアルフォンスは笹を元の位置に戻しながら言った。



「本当、素直じゃないですよね兄さんは、」


本気で落ち込む私に、アルフォンスが言ったのは。


「兄さんは、『"錬金術師らしく"天辺に結んできた』って言ってた。・・・・錬金術師である大佐なら、この言葉の意味、解りますよね?」


そう言って、彼は軽く会釈して去って行った。



・・・・・どういう意味だ?


一人取り残された私は、紙に書いてあった言葉を再び見ようと手を伸ばした。


辛辣な言葉を見る度に、胸が痛い。


だが。


「・・・・ん?」


ーーーーー私は、気付いてしまった。


一見、悪口のようにしか取れない言葉に隠されていたメッセージを。


そして、何故、紙の"裏側"に『大嫌い』と書かれていた事の意味を。






私は片手で顔を覆い、笑った。



正に、"錬金術師"らしいと思った。



彼が記した、本当の想い(メッセージ)。


それは。







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