鋼の錬金術師/Y 20210223
□七夕〜切なる願い〜
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その言葉に、私は弾かれたように振り返ってアルフォンスを見た。
「・・・・・・それって、」
それはつまり。
一番見られたくない相手に見られてしまったと言う最悪な事態に、私は盛大な溜め息を付いて片手で顔を覆い隠す。
「アルフォンス、」
「はい、」
私は顔を上げ、彼を見た。
「もしかして、鋼のと一緒に君も見たのかね?」
そう恐る恐る問えば、アルフォンスは笑う。
「いいえ、その時は見てはいないです、」
笑いながらそう答えたアルフォンスの言葉の意味を悟った私は、気恥ずかしさの余りその場に踞る。
「・・・大佐?」
見上げた私の顔は、恐らく真っ赤だろう。
だが、唯一の救いは今の時間が夜で、照明は司令部の窓から射し込む明かりと月光だけだったのが有り難かった。
「・・・・・・鋼のは、何て言ってた?」
「兄さんの様子がおかしくなったのは、『司令部の七夕飾りを見てくる』って言って帰って来てからでした。だから、『どうしたの?』って聞いたら、『気に食わないから、余ってた笹を使って"錬金術師らしく"天辺に結んできた( ̄^ ̄)』って言ってたから、どういう意味だろうと思って見に来たんです。そしたら、帰ろうとした所に大佐が七夕飾りに向かうのを見掛けたので・・・」
クスクス笑いながら放った彼の言葉に、私は『だから、笹の先の飾り方が妙に不恰好な付け方していたのか、』と納得した。
だが、『有る事』に気付いた私は弾かれる様に空を仰ぎ見る。
それは、笹の先には彼が書いた短冊が飾られている、と言う事を。