鋼の錬金術師/X
□過保護な彼のセリフ/第2話/しぃ〜・にゃーにゃ!
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俺は改めて、箱の中を見た。
その中に入っていたのは、改良前に使用していた機械鎧素材で造られた、フラメルのペンダント…だった。
まさか、『あの時』、俺が気まぐれで錬成したモノをまだ持っていたなんて。
ふと、『あの日』の記憶が蘇る―――。
※※※
あれは確か、国家錬金術師になって間もなかったと思う。
イロイロ無茶したせいで()、見事機械鎧をぶっ壊してしまった俺は、錬金術が使えなくなり負傷。
結果、一泊だけだが入院する事になってしまった。
当然、俺達の後見人である大佐達の耳にも入り、案の定。
『どれだけ心配したと思っているんだ!』と、こっぴどく叱られた。
だけど、アルと大佐のW叱責を受けた俺は、完全にふてくされた。
確かに、無茶した俺が悪いのは分かってる。
でも、だからといって、二人して責める事ないじゃないか!
悶々としながら退院した俺を待っていたのは。
『…大佐』
『乗りなさい。君に、見せたいものがある』
そう言って俺が連れて行かれたのは、何故かお菓子の工場。
俺としては、何故ここに連れて来たのか分からなかった。
だが、大佐の同級生が工場長を勤めているらしく、あっさりと見学させてくれた。
巨大なオーブンから長いベルトコンベアーに乗って出てきたのは、正に焼きたてのクッキー。
そのコンベアー横には、全身白ずくめの人間が選別している。
『これは何の菓子かね?』
大佐に問われた工場長は、にっこり笑った。
『これはチョコバイのクッキー部分だよ。次の工程では生クリームが塗られ、サンドされる。後はチョコレートでコーティングされ、乾燥、フィルム包装、箱詰め、段ボール詰め、そして漸く、各店舗に発送される』
普段食べている菓子の製造過程を全く知らなかった俺は、思わず言った。
『へぇ〜』
感心して見ている俺達の目の前で、突然、警告音と共にコンベアーが止まった。
どうやら、オーバーヒートを起こし、電力配給が一時的にストップてしまったらしい。
今まで順調に流れていたクッキーが行き場を失い、どんどんとコンベアーに溜まってく。
しかも、かくはんされて一定温度に保たれていたチョコレートも固まり始めていて。
『再稼働が大変だ、』と苦笑いしながら工場長は現場に戻ってしまった。
『…鋼の』
黙って見ていた大佐が、呟くように俺の二つ名を呼んだ。
『なに?』
『何故、私がここに連れて来たか分かるかね?』
彼の意図が分からなかった俺は、思わず彼の顔を見る。
大佐は、切なげな眼差しで俺を見ていた。