鋼の錬金術師/X
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君に言えなかったことがある5題/第二章『ごめん〜君に謝りたかったこと〜』
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漸く落ち着いた俺を、少尉達がゆっくりと両手を離した。
俺は下に俯いたまま、呟くように言った。
「…………アル、俺…大佐ん所、行ってくる。先、宿に帰ってて」
「分かったよ、兄さん。大佐を休ませてあげてね」
「………………ああ」
――――こうして俺はアルと別れ、大佐の待つ執務室へと向かった。
だが。
「……………!」
まるで何かに取り憑かれたように、一心不乱に仕事をこなす大佐に、俺は思わず言葉を失った。
殆ど眠れていない上、食事もマトモに捕っていないのだろう。
色彩を欠いた頬は痩け、眼の下には酷いクマが出来ていた。
しかも、俺が入って来た事すら気付かないなんて普通じゃない。
異常だ。
俺は、大佐の前に立つ。
そして勢い良く机を叩き付けるように両手を付いた瞬間、漸く気付いたのだろう。
のろのろと頭を上げた大佐に、俺は一瞬言葉を詰まらせた。
余りにも憔悴しきった彼の姿に、胸に激痛が走る。
だが俺は懸命に激情を押し殺すと、口を開く。