鋼の錬金術師/X
□君に言えなかったことがある5題/第二章『ごめん〜君に謝りたかったこと〜』
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だが、思いもしない『真実』に。
俺もアルも、思わず黙り込んでしまった。
「………兄さん、」
だが俺は、腹の底から湧き上がる『激情』に。
思わず、叫んだ。
「あんのクソ大佐ヤローっ!」
勢い良く走り出そうとした俺を、ハボック少尉に素早く羽交い締めにされた。
「離せよ!離せっ!!」
激情のまま暴れる俺に、ハボック少尉とブレダ少尉が二人掛かりで押さえ込んでくる。
「暴れるなよ!」
ブレダ少尉に怒鳴られても、俺は、暴れずにはいられなかった。
何故なら、大佐は―――!
「いい加減にしろ!」
ばん!と、ハボック少尉の平手が飛んだ。
まさか叩かれるとは夢にも思わなくて。
俺は頬を押さえ、ハボック少尉を見た。
「ごめん。だが、大佐の気持ちも判ってやってくれ」
「だけど…っ」
するとハボック少尉は、俺の両手を包み込むように握った。
「いいか、良く聞け。大佐はな、あんたの手を血で染めたくなかった。誰よりも命を重んじるあんたに、人殺しなんてさせたくなかった。あんたのこの両手は――――」
――――希望という名の『光』だけを掴み取る手であって欲しい。
「それが、大佐の望みなんだよ」
「…………」
何も、言えなかった。
視界が歪んでいく。
「………ったく、何キザったらしい事してやがるんだよ、無能が…っ」
―――そう、悪態を付くので精一杯だった。