鋼の錬金術師/Y 20210223
□七夕〜切なる願い〜
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『エドワードにとって、唯一『本当の自分』に、
『ありのままの自分』に戻れる場所に、私がなれますように』
ーーー私は短冊に、そう願いを込めて書いた。
もちろん彼ら兄弟の身と心の安全と、悲願成就も。
まあ、強い彼らだから本来ならこんな子供騙しのようなモノにすがり付くとは到底思えないが。
でも、それでも、私はそう願わずにはいられなかった。
何故なら彼らは、錬金術師としての才能が優秀で有ったが為に、子供らしい生活や夢さえも失ってしまった。
緑豊かなリゼンブールの草原を走り回り、カブトムシを追いかけながら同い年の友達と無邪気に笑い合える『子供時代』を。
・・・私は、彼を『国家錬金術師』という棘の道に引き摺り込む事で永久に潰してしまったのだ。
「・・・・・、我ながら女々しくて嫌になるな、」
そう呟きながら、私は風に揺れる笹の葉を見つめた。
だが。
「・・・・ん?」
何か『違和感』を覚えた私は、小首を傾げ改めて笹の葉を見詰めていると、不意に『大佐?』という可愛らしい声に振り返った。
アルフォンスだった。
「どうしたんですか?」
「いや、・・・・」
私としても、何故違和感を覚えたのかが分からない。
だが次の瞬間、気付いた。
「アルフォンス、さっきと比べて若干竹の先が高くなってるような気がするんだが、」
そう。
私が天辺の笹の葉に短冊を結ぶ時は、こんなに高くはなかった筈だ。
するとアルフォンスは、思わぬ言葉を口にした。
「あ、それ、兄さんの仕業ですよ。『天辺に結んで来た』って言ってましたから」